19/10/03 大規模バランス変更案が公開されました。(最終更新:11/15)
Summary
- 心配しましたが、今年もBlizzcon後の大規模アップデートが行われます!
- https://starcraft2.com/en-us/news/23159844
詳細
19/10/30追記:テストマップには随時変更が入るため、この変更リストも随時更新しています。それぞれの変更に関しては以下の記事をどうぞ。
2016年に初めて行われ、その後17,18と続いて来たBlizzcon後の大規模バランスアップデート。
例年最後のWCS Circuitの場で発表されてきたのですが今年は発表されず、今年序盤の大規模レイオフの話もあったため、
もしかして今年は大規模アップデートやらないんじゃ・・?という雰囲気がコミュニティ内に出始めていましたが、10月はじめになってようやく公開されました。
今年は例年と異なり8月にバランス調整が行われた、というのも遅れた理由かもしれませんね。
今年は以下の2つがテーマになります。
- ユニットの力を最大限引き出せるような新しいアップグレードを追加し、レイトゲームでの立ち位置を改善する。
- キーユニットやアビリティの射程を意図的に短くすることで、レイトゲームのより良い相互作用を促す。
それでは調整案を見ていきましょう。
テラン
Hellion/Hellbat
- Infernal Pre-Igniterの研究コスト:150/150→100/100に減少。
2011年夏のMLG、伝説のチームSlayerSのテラン達が、ゲーム序盤での青ヘリラッシュでザーグを焼き殺しまくりました。
それによりInfernal Pre-Igniterによるボーナスダメージは半分(現在の値)になったわけですが、
それ以降この研究は中盤の火力増強のために割と後回しで入れられるようなケースが多くなりました。
今回この研究のコストを下げることで、Hellion/Hellbatがもう少し早い段階で強いパワースパイクを持てるように変更したいようですね。
Thor
- High Impact Payloadのダメージ:40(+15 vs Massive)→25(+10 vs Massive)に減少。
- High Impact Payloadの攻撃間隔:1.7秒→0.9秒に減少。
何回かの調整で対空マッシブユニット相手に強力な攻撃能力を持ったThorですが、いかんせん攻撃間隔が遅いことにより、大規模戦闘時にレスポンスがイマイチに感じられることも多かったのは確かでした。
これを改善するために、1発の攻撃力を下げる代わりに攻撃間隔を対空攻撃(Thor's Hammer)と同じにして扱いやすくし、DPSも少し上げる実験的な変更を行いたいようですね。
この後もいくつか出ますが、Brood Lordに対するカウンター能力を上げたい意図が大きい変更でしょう。
Medivac
- Rapid Reignition Systemの研究場所:Tech Lab→Fusion Coreへ変更。
- Rapid Reignition Systemの効果:Ignite Afterburnersのクールダウンを5秒減少させることに加え、Medivacの基礎移動速度を3.5→4.13に増加させる。ただしIgnite Afterburners時の速度に変更はなし。
使われない研究ランキングで常に1位の座を守り続けてきたこの研究。効果を微妙に変えたりしながらも結局まったく使われることはありませんでした。
効果はともかく、通常Reactorを付けておきたいStarportにTech Labを装着しなければならないという最大のハードルが高かったとも言えるでしょう。
今回追加効果を加えるとともにFusion Coreでの研究にすることで、レイトゲームやBattlecruiserオープニング時に入れていける研究になるかもしれませんね。
Liberator
- Advanced Ballisticsの研究場所:Tech Lab→Fusion Coreへ変更。
- Advanced Ballisticsによる射程アップ:4→3に減少。
この研究は強力でありながらも、Medivacの時と同様にStarportにTech Labを付けなければならず、スムーズに移行が進まないことが多いため、スムーズにレイトゲームに移行できるようにしたいとのこと。
研究は入れやすくなるものの、射程アップ効果を下げることで、レイトゲームで強くなりすぎないようにバランスを取っています。「レイトゲームユニットの射程減少」の一つですね。
Raven
TvT序盤にSiege Tankを漬物石にしてまわっているRavenさん。フルエナジーでうまく操作すれば4体を無効化させることができるため、さすがにちょっと強すぎるよねということで、
エナジーコストを75に増加させることになりました。これで1体のRavenにつき2体のSiege Tankしか無効化できなくなるので、序盤のSiege Tankの有用性が戻ってきそうですね。
その代わりに効果時間が少し増加しています。TvTよりはむしろColossusなどを止める際に大きく役立ちそうですね。
- 移動速度:3.85→4.13に増加。
昔RavenがHunter-Seeker Missileやダメージ付きのAnti-Armor Missileによってレイトゲームキャリーユニットだったころ、移動速度を低く抑えることはマストでした。
現在は意図通りのサポートユニットに収まっているため、移動速度を低くしておく必要はないということで速度バフになります。
ハラスやクリープ除去などに役立ちそうですね。
Battlecruiser
- Tactical Jump時、Battlecruiserはテレポート前の1秒間スタンするようになる。
昨年の大規模パッチで移動しながら攻撃できるようになって移行、序盤のハラスから中盤の戦闘、レイトゲームのメインユニットにと大活躍のBattlecruiserさん。
開発チームはこの八面六臂の大活躍に大満足のようですが、さすがにちょっとお手軽すぎる面があるよねということで少し弱体することになりました。
テレポート前のスタンは単純に破壊するチャンスが増えることになりますね。ただしスタン中にFungal Growthなどの移動阻害スキルを使われても、テレポートが止まることはありません。
こちらもナーフ。波動砲に対するカウンタープレイを生み出したいようですね。
MULE
- 稼働時間:64秒→63秒に減少。
何が違うねん!と思うかもしれませんが、これによりMULEがミネラルを持ったまま時間切れになることが無くなります。ちょっとうれしい。
ザーグ
Creep Tumor
- アクティブになったCreep Tumorはキャンセルできなくなる。
ザーグ上級者は伸ばそうとしているCreep Tumorが攻撃されそうになるとキャンセルすることで守っていましたが、これが不可能になります。
基本的にはHellionとQueenの関係を意図したもので、テランにとってはクリープ伸長を止めやすくなりそうです。
Overlord
- Pneumatized Carapaseの研究コスト:75/75→100/100に増加。
もともとはザーグがプロトスのImmortalオールインを防ぐのが難しいということでコストが削減されたこの研究でしたが、
同時に入ったWarp Prismのコスト増加やプロプレイヤーの研究によりImmortalオールインの防衛がやりやすくなったこともあり、結果的にはザーグ繁栄の一因となりました。
加えてvTの偵察能力も高すぎるよねということで、この研究コストが以前に戻ることになりました。
ミネラルはともかくガスコスト25増加はそれなりに重いので、ザーグはこの研究を入れるかどうかより慎重に考える必要が出てきますね。
Infestor,Infested Terran
Infestorの強さを支える一つのこのスキルですが、ちょっと射程が長いんちゃう?と思っていた人も多いのではないでしょうか。
射程が短くなることで、スキル発動がより大きなリスクになります。「レイトゲームユニットの射程減少」の一つですね。
- Infested Terranアビリティを削除。
- 新アビリティ:Microbial Shroud
- 指定した範囲を粒子で覆い、範囲内の地上ユニットが空中ユニットから受けるダメージを50%減少させる。
- 効果時間11秒、消費エナジー100、キャストレンジ9、効果範囲3。
- Infestation Pitでの新研究:Evolve Microbial Shroud
- Hiveが必要、必要コスト150/150、研究時間79秒。
大量のInfestorから出てくる無料のInfested Terranに対空を担ってもらうケースを問題視したのか、全く新しいスキルが提案されています。
このスキルはNeural ParasiteやFungal Growthのようなそれ単体で大きな戦果を上げるわけではないサポートスキルですので、マスInfestorの有用性は下がります。
以前Infestorには範囲内の味方の攻撃速度を上昇させるスキルが追加される案もありましたが、それと同じような味方バフ系のスキルということになりますね。
Hydraliskなどの地上軍にしっかりと対空をやってもらうためのサポートスキルですが、このスキルの範囲内で戦っているとそこにPsionic Stormなどが飛んできそうな気もします。
開発チーム自身もこれはかなり実験的な変更で、実装されるのであれば今後いくつかの変更が必要だろうとも述べています。
細かい仕様を言うと、建物やColossusを守ることはできず、Oracleの攻撃のようなスキルダメージも軽減不可、Colossusの攻撃も軽減不可です。
またこのスキルはInfestorがバロウ中でも発動できるようです。
Lurker
- Lurker Denの建築時間:86秒→57秒に減少。
- Lurkerの攻撃射程:9→8に減少。
- Lurker Denでの新アップグレード:Seismic Spines
- Adaptive Talonsの研究時間:54秒→57秒に増加。
- LurkerはBlinding CloudによりMeleeの範囲しか攻撃できなくなる。
今回の変更の意図は、プロトスのImmortal/High Templarに対するBrood Lord以外のカウンターをザーグに用意したい、というもので、そのユニットは現在もある程度その役割を果たしているLurkerでなくてはならないと考えているようです。
Lurker Denの建築時間減少によりLurkerへのトランジッションをスムーズにしつつ、基礎射程を下げることでミッドゲームに強くなりすぎないように調整。
Hive以降の研究により射程を伸ばし、結果現環境よりも強力なユニットに、というのが調整内容です。Adaptive Talonsの研究時間に関しては、他の研究と時間を合わせたという形です。
以下のBrood Lordのnerfもありますので、その役割をLurkerに渡す変更案、一体どうなるでしょうか?
Blinding Cloudとの関係に関しては今まで遠距離攻撃できたのかよ!と思うかもしれませんが、
Blinding Cloudにより確かに近接ユニットしか狙えなくなったものの、トゲトゲは最大射程までちゃんと伸びていくので、結果的にMelee範囲外にいるユニットにも当たっていました。
BlizzconでもSerral vs ReynorでUltraliskがLurkerに焼き殺される悲しいシーンがありましたが、この仕様も間違いなくその一因でしょう。
今回の変更で本当にMelee範囲しか当たらなくなるので、レイトゲームZvZでの対LurkerユニットとしてUltraliskの株が上がりそうです。
Brood Lord
- Broodlingの射出射程:12→9に減少。
Brood Lordの攻撃射程そのものは10であるものの、Aクリックの命令を出してBroodlingが射出されてからすぐ引くことで射程13から攻撃が可能になっていました。(仕様?バグ?)
詳細はこの動画をどうぞ→https://clips.twitch.tv/CrispyJazzyBorkSuperVinlin
この変更により、AクリックだろうがAムーブだろうが同じ射程10で攻撃することになります。
これもまた「レイトゲームユニットの射程減少」の一つですね。
Nydus Network/Nydus Worm
- Nydus Wormの設置アビリティのクールダウン:0秒→14秒に増加。
- Nydus Wormの生産コスト:50/50→75/75に増加。
- Nydus Network,Nydus Wormの最初のアンロード時のディレイ:0.18→0.36秒に増加。
- Nydus Network,Nydus Wormのロード間隔:0.09→0.18秒に増加。
- Nydus Network,Nydus Wormのアンロード間隔:0.18秒→0.36秒に増加。
仕様変更によりこの世の春を謳歌しているNydus Network。GSL決勝でも大活躍でちょっとヘイトすら集める結果となりました。
開発チームはこの1年の活躍に喜んでいるものの、いくつかのシチュエーションにおいて強すぎる現状を是正したいようです。
ロード・アンロードともに間隔を倍にすることで、ユニットの収納・射出(といって良い速度で今は出てますよね)速度が遅くなるため、
序盤のオールイン時に対処しやすくなったり、中盤の振り回しに使われる際も帰れないユニットが出てくる可能性が高まります。
加えて設置アビリティのクールダウンは途中で破壊された際にすぐには再設置できなくなる(破壊されなかった場合はすぐ使用可能。クールダウン時間がNydus Wormの生産時間と同じ)ため、
カウンタープレイの幅が広がると言えるでしょう。弱体化したぶんはHiveに行った後研究することで今の性能に戻すこともできますよ、という形ですね。序盤~ミッドゲームにおける弱体化調整となります。
コスト増加に関しては、現状コストが安いため中盤以降は下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる状態で出しまくっているザーグも多く見かけます。
開発チームもちょっと安すぎたテヘと述べており、序中盤に失敗したときのリスクを増やすため、今回コスト増加が提案されました。
3つの弱体化調整が同時に提案されていますが、Nydus Network/Nydus Wormの強さはある程度は残したいというのが開発チームの意図ですので、どの変更案が実装されるのか、もしくは全て実装されるのかはこれから見極めて行きたいようです。
プロトス
Oracle,Sentry,Void Ray
- ビーム攻撃が意図するよりも大きなダメージを与えていた現象を修正。
以前話題になったビーム攻撃バグの修正ですね。これにより、特定のマイクロをすることで可能だった、ユニット単体により多くのダメージを与えることができなくなります。それ以外のすべての状況においては変わらないとのことです。
具体的な表記がないのでちょっとふわっとしていますが、どの程度の影響があるのかはテストしてみる必要がありそうですね。
Zealot
現在のChargeの能力はそのコストと研究の容易さに対して高すぎると開発チームは考えているようで、直撃時のダメージが削除され、そのかわり研究終了後の移動速度が4.13から4.72に上昇します。
これによりHotS以前のZerglingとZealotの関係(プロトスに+1アタックが入ればZealotがZerglingを2発、ただしザーグに+1アーマーが入ればその限りではなくなる)が完全に復活することになります。
移動速度4.72というのはどれくらい早いかというと、スティムMarineと全く同じ(というか合わせたのでしょう)です。直撃ダメージが無くなる代わりに引き撃ちは困難になりそうですね。
これもまた実験的な変更とのことですので、特にスティムバイオとの関係は注視していきたいとのことです。実際問題、弱体化になっているかどうかもテストが必要かもしれませんね。
Adept
- Resonating Glaivesの効果:Psionic Transfer終了後6秒間、Adeptの攻撃速度が60%増加するようになる に変更。
開発チームが考えるAdeptの問題点は2つあり、1つはレイトゲームでの有用性が低いこと、もう1つはZealotと役割がかぶっていることです。
加えてレイトゲームの有用性の低さもZealotに食われているからであると分析しています。
Psionic Transferを活かしやすい序盤中盤はともかく、試合が終盤に近づくにつれどちらも前線でAムーブして戦うユニット(開発チームはこれを「Pusher」と呼んでいるとのこと)になってしまい、それならZealotのほうがいいよね、という流れですね。
そこでAdeptの最大のアイデンティティであるPsionic Transferを主軸としたアップグレードデザインに変更することになりました。
前線で素直に殴り合うとPsionic Transferを使ったとしても以前より有用性が下がりますが、Psionic Transfer仕様後の一瞬のバーストダメージは以前より上がります。
ワーカーハラスやSiege Tankなどのシージユニット突破時などにより大きな役割を果たせるようになり、中盤~終盤のZealotとの役割の重複も避けられるのではないか、というのが開発チームの狙いとなります。
これもまた実験的な調整ですので、細かい数値などは今後の状況を見て変更していきたいとのことですが、どうなるでしょうか。
PvZのAdeptラッシュやAdept/Phoenixなどの破壊力は増すかもしれませんが、これでレイトゲームに立ち位置を見つけられるかはなんとも言えないところかもしれません。
Observer
- 移動速度:3.01→2.63に減少。
- Gravitic Boostersの増加移動速度:1.51→1.31に減少。
去年アップした移動速度をもとに戻す修正です。もともとどうして移動速度が上がったのかよくわかりませんでしたが、
「移動速度アップで得られる利点がObserverをギリギリ捕まえられないフラストレーションを上回っていない」というよくわからない理由で戻ることになります。
プロトスの偵察能力の減少に繋がりはしますが、そこまで大きな影響はなさそう・・・ということでしょうかね?
Void Ray
- Fleet Beaconでの新アップグレード:Flux Vanes
古の研究が帰ってきます。パッチ1.2.0(2011/1)に削除されたVoid Rayの移動速度アップ研究「Flux Vanes」です。
もともとこの研究は敵ベースまでらくに飛んでいって建物をぶっ壊して回ったり、特に低レート帯でVoid Rayが猛威を振るう一因になったりと悪い影響が大きかったため削除されました。
現在はスキルがパッシブからアクティブになったり、ViperやWidow Mine、Cycloneなどのカウンターも増えたため、移動速度アップ研究を再度導入し、新たな役割を見出してほしいようです。
NAダイア~マスター帯にいるVoid Rayおじさん大歓喜の研究になりそうです。
Tempest
- 対空攻撃(Kinetic Overload)の射程:15→14に減少。
- 体力:150→200に増加。
- シールド:125→100に減少。
これもまた「レイトゲームユニットの射程減少」の一つです。Liberatorのアップグレード後射程も1落ちているので、その関係性は維持しつつ、
StalkerやVikingなどで対抗するのが少しだけ容易になります。
その分体力を増加、シールドを減少。合算値では25ほど増加する計算になります。これは強力なEMP Round対策という面もあるとのことです。
Mothership
- Time Warpは地上ユニット・建築物に加え、空中ユニットにも影響するようになる。
- Time Warpのスキル発動までのディレイ:3.57→1.79秒に減少。
- Heroicタグを付与する。
- Neural ParasiteはHeroicユニットに対しては使用できない。
天国から見守っているMothership Coreの形見であるこのスキルですが、前回パッチで追加された「攻撃速度ダウン」という新たな能力を持ってしても、
Viperに引っ張られた時に最後っ屁で発動させるケースくらいしかほとんど見ることがありませんでした。
それを受けて空中ユニットにも有効、さらに発動までの時間半減と大幅にバフされています。Mothership Coreも天国で喜んでいるでしょうね。
とはいえNeural Parasiteで乗っ取られて悪用されてしまっては元も子もありません。
Heroicタグの付与により、プロトスが誇る母艦は常にプロトスのために尽くしてくれるようになります。これもInfestorの弱体化の一つになりますね。
まとめ
今回の調整はミッド~レイトゲームに生きる新研究の導入や長射程ユニットのナーフなど、レイトゲームをよりダイナミックにするための調整案が多くを占めています。
すでにテストマップで遊ぶことが可能なようなので、みなさんもぜひ遊んでみてはいかがですか?
毎年言っていることですが、これはあくまで「調整案」に過ぎません。最初の発表から実装までには毎年多くの要素が変更されていますので、誤解なきように。