24/10/22 5.0.14 PTRバランスアップデート案が公開されました
目次
Summary
前回のパッチについて
最後のバランスアップデートから7ヶ月が経ち、ESL SpringやGSL、そして最大の大会でもあるEsports World Cupも終了しました。
前回のパッチでは、PvTにおけるCycloneやWidow Mineなどに調整が入り、PvTの改善を目指しましたが、
バランス評議会(Balance Council)はその目標が達成されたと感じているようです。
たしかにしばらく振るわなかったプロトスですが、Esports World CupではherOがベスト4に入るなど、一定の結果を残しました。herOが強かっただけなのでは?とか言わない!
バランスアップデート内容
これを踏まえて、シーズンオフである今、さらに野心的な目標を達成するための新しいバランスアップデート案が提示されています。
バランスアップデートの目的
- すべての種族の防御とキャンプのプレイスタイルを弱体化し、序盤からアクティブなプレーを促進する。
- プロトスツールを作り直し、高レベルなゲームプレイにおいてプロトスをやや効率的にする(かつ、低レベルにおいてT,ZがvPをやりやすくする)
- 様々なマッチアップに関して、強力なプレイスタイルの新しい選択肢を用意する
- どのレベルにも適用される、QOLの変更も引き続き入れていく
プロトスの変更案
Nexus
「防御を弱体化」の一環の変更です。Battery Overchargeを「相対して最も苛立たしい能力」と捉え、かつSCVの修理やQueenのTransfusionに比べて低レベル帯で効果的だとしています。
代わりに実装されるEnergy Rechargeはエナジーを回復するため、Sentry、OracleやHigh Templarなどのエナジーを使って防衛するユニットの防衛能力を強化します。
もちろんShield Batteryにも使えますが、その
使い方ではBattery Overchargeに比べるとかなり弱くなってしまいそうです。
プロトスの序盤防衛やハラス対応などに大きく役立っていたBattery Overchargeですので、この変更はかなり大きなインパクトを与えそうです。
Battery Overchargeはユニットに耐えてもらうにしろ、相手が一旦引くにしろ、時間を稼ぐことができるスキルでしたが、Energy Rechargeでは時間稼ぎはかなり限定的になります。
序盤にエナジーユニットを使った防衛も多かったPvZはともかく、ユニットの戦闘力がものを言うPvTにおいて特に影響が出そうですが…
なお、Battery Overcharge同様クールダウンが60秒あるので、同じネクサスで何回もエナジー回復して無限ストーム!のようなことはできませんので悪しからず。
Shield Battery
- シールド/HP:150/150→200/200に増加
前述のBattery Overcharge削除でプロトスの防衛力が弱体化するため、それを補う調整です。最序盤にユニットを無視してShield Batteryを殴る動きのリスクが増えることになります。
ただBattery Overchargeが無い以上、Shield Batteryを殴る価値も落ちている(特にある程度のユニットがいる中盤以降)ため、この変更がどの程度効くかは若干不透明に感じます。
バランス評議会としては、この分野(Battery Overcharge削除におけるプロトス防衛の弱体化)はPTRを通じて注視し、追加の調整が必要かどうかを確認したいとのことです。
Colossus
- シールド/HP:150/200→100/250に変更
これもBattery Overcharge削除に伴う調整。中盤にBattery Overchargeで守りたいユニットの筆頭候補であるColossusの生存能力を上げるための変更です。
Battery Overchargeが無くなるのであれば、シールドを確保するよりもHPが多いほうが生存能力が上がりますし、EMP Roundにも強くなるほか、アーマーのアップグレードの恩恵も受けやすくなります。
Tempest
- サプライコスト:5→4に減少。
- ダメージポイント(攻撃を始めてから完了するまでの時間):0.119→0.0857に減少(28%減少)
- 対空射程:14→13に減少
これは「プロトスツールの作り直し」に分類される変更でしょうか。
レイトゲームに対Brood Lordや対Liberatorで出てくることも多いTempestですが、
長射程を活かしたPokeでは強いものの、DPSが低いことから大規模戦闘ではあまり活躍ができませんでした。
それを受けて、高レベルプレーヤーがTempestを出しつつももう少し他のユニットを構成に詰め込めるようにサプライコストを減少。
ただし大規模なTempestの軍に強くなってほしい訳では無いことから、射程を1減らすという調整も加えています。
レイトゲームに活きてくる調整ですが、どの程度のインパクトがあるでしょうか?
Immortal
バランス評議会の意図としては、PvZにおけるImmortalのダメージ出力が高すぎるため、それを弱体化しつつ、埋め合わせに若干コストを落とすことで、ザーグがプロトスの中盤の攻撃に生き残りやすくする、というもののようです。
なかなかピンとこない調整ではありますが、コスト削減は最序盤の防衛にも役立ちそうではありますね。
Disruptor
- Purification Novaの効果範囲:1.375→1.5に増加。
- Purification Novaのダメージ:145(+55 vs Shield)→100(+100 vs Shield)に変更。
23年1月に範囲が減少した後、低レベル帯では未だに脅威であるものの、高レベル帯でのDisruptorの脅威は減少しました。
今回の変更は、以前のパワーを取り戻しつつダメージを下げることで、Disruptorの単独攻撃での「ペナルティ」を軽減する、という意図のようです。
これによりRoach、Ravager、Marauder、Hellbatなどのユニットをワンショットできなくなります。
テランは範囲が大きくなったことに文句を言い、プロトスはダメージが減ったことに文句を言っていたこの変更。どちらかといえばナーフにも見えますが、どうでしょうか?
Mothership
- ミネラル/ガス/サプライコスト→300/300/6サプライ→400/400/8サプライに増加
- シールド/HP:250/250→350/350に増加
- 攻撃:6ダメージ×6ビーム→6ダメージ×4ビーム×4体に変更(つまり、4体のユニットを同時に攻撃できるようになる)
今回のバランス調整案で個人的に最もロマンを感じるのがこの変更。
23.9の変更でコスト・サプライ・サイズなどが減少、移動速度は増加、スキルのリワークなどが行われ使いやすくなり、確かにプロの試合でも以前より見かけるようになりました。
しかしMothershipが重要なアイデンティティを失った、というコミュニティからの意見もあったようで、今回の変更に至りました。
コストやサプライこそ上がったものの、早くなった移動速度や小さくなったサイズはそのままに、4体のユニットに同時に攻撃できるようになります。
ビームがいっぱい出る様子はなかなか壮観なので一度は試してみてください。最も、MothershipがこのようにしてDPSを発揮できる機会がどれくらいあるかは疑問ではありますが…
元記事にgifファイルがあるのですが、重くてここには載せられませんでした。
テランの変更案
Bunker,Missile Turret,Sensor Tower
- SalvageアビリティをMissile Turret,Sensor Towerにも追加する。
- Salvageはダメージを受けると中止されるようになる。
サルベージの適用範囲を増やす変更。これにより、テランが防衛地点を変える際、不必要になったMissile Turret,Sensor Towerをサルベージできるため、移動する際の効率が上がる、というのがバランス評議会の意図のようです。
しかし序盤のバンカーラッシュなどの攻撃の際に、壊されそうになったバンカーをサルベージして資源を回収…といったことはできなくなります。
個人的にはちょっと意図が読めない変更です。気軽にMissile TurretやSensor Towerまでサルベージできるようになれば、とりあえず立てとくか後でサルベージできるし、となり、
弱体化させたかった防衛的、キャンプ的なプレーが促進されてしまうのでは?とも思うのですが…新しい陣地に行きたいけどセンサータワーやタレットのコストが重くて行けない…!ということはあまり無いのではないでしょうか。
Planetary Fortress
- アーマー:3→2に減少。
「終盤のキャンプツールを弱くする」意図の変更。大量のユニットで殴ることが多いこの建物のアーマーナーフにより、他種族からすると攻めやすくなりそうです。
Sensor Tower
これも「終盤のキャンプツールを弱くする」意図の変更のようです。センサータワーの範囲が減ることでマップ全体をカバーしづらくなり、キャンプしづらくなる…という意図らしいのですが、
コストが安くなったわけですし、いらなくなったらサルベージもできるようになったので、今までよりも気軽に序盤から立ててもいいよね!と考え、より防衛的になるのでは?という気もします。
ガスコストだけで見れば今までの1本と2本が同じなわけですし…
Orbital Command
- Calldown:Extra Suppliesアビリティは、Supply DepotのHPを500に増加させ(もとは400)、HPが減っている場合は即座に回復する。
バランス評議会の意図としては、上級者はこのスキルをあまり使わず、サプライが詰まったときに緊急で使うだけなので、他の価値をもたらしたい、というもの。
確かにこの変更で、割られそうなSupply Depotにすぐさまこのスキルを使って回復…というシーンが生まれるかもしれませんが、
それって「防衛的なプレーを弱くする」コンセプトからは逆行してるんじゃ?と思わないでもないです。とはいえ便利であることは間違いなさそうです。
Hellion
- Infernal Pre-Igniterのvs Lightボーナスダメージ:+5→+9に増加(Hellbatは変更なし)
バランス評議会の意図としては、ブルーフレイムアップグレードはハラスにほとんど用いられないため、この変更で全種族のワーカーを2ショット(今はノーアップグレードなら3ショット必要)できるようにし、
これにより全てのマッチアップであまり用いられていないメック構成をサポートし、序中盤により攻撃的にプレーできるようにしたい、ということのようです。
これは「強力な構成の選択肢を増やしたい」コンセプトに沿ったものと思われます。青ヘリオンやメックがそこまで使われていない印象も無いのですが、強力なバフであることは間違いありませんね。
Liberator
- Advanced Ballisticsの効果変更:Defender Modeの射程+2→Defender Mode時の攻撃半径を5→6.25に増加(56%の範囲増加)
- 25pxSmart ServoがLiberatorにも適用されるようになる。シージ時間は2.89→2.12、アンシージ時間は1.46→1.13に減少する。
前回のパッチで弱体化&マップ作成者への配慮として弱体化されたAdvanced Ballisticsの射程アップ効果ですが、
やはり未だにプレーヤーにとってもマップ作成者にとっても厄介な要素であるようで(ミネ裏にシージして対地ユニットで届かないパターンが発生する)
新しいアプローチとしてシンプルに攻撃半径の増加をテストしたいとのことですが、流石に範囲を増やし過ぎなような気がします…シンプルに制圧範囲が1.5倍になっているわけですので、
ナーフというよりはバフになった印象が強いです(Liberatorをバフする理由もよくわかりませんが)し、キャンプツールを弱体化させるというコンセプトにも反しているように思います。
ただし、攻撃円の最大到達距離自体は減っているので、Thorに対しては弱体化しています。
Thor
- Explosive Payloadのダメージ:6(+6 vs Light)→8(+4 vs Light)に増加
- Explosive Payloadのスプラッシュダメージ半径:0.5の100%ダメージ→0.5で100%ダメージ、0.75で75%ダメージ、1.25で50%ダメージ
- Explosive Payloadの攻撃射程:10→7に減少
ThorのExplosive PayloadはvsMutaliskにしか使われておらず、それ以外の面では25pxHigh Imapct Payloadのほうが強力なため、
Explosive Payloadに対して全く別のアプローチをしたい、というのがバランス評議会の意図のようです。
射程が減少した代わりに基礎ダメージ増加+スプラッシュダメージ半径増加で、スタックしているエアユニットに対して大きなダメージを入れられるようになりました。
VikingやVoid Rayなどを相手にする場合には強化といって良いかもしれません。
逆に射程が減少したことで、Mutalisk対策としては若干弱体化したのではないでしょうか(主にハラス対策面で)。
ザーグの変更案
Queen
Hatchery
Spine Crawler
- 生産時間:36s→32sに減少
- ダメージ:25(+5 vs Armored)→30に増加
Spore Crawler
- ダメージ:15→20に増加
- HP:400→300に減少
ZvT/ZvPにおける大量のQueenを使った防御的なプレーが強力であるため、テラン・プロトスが序盤に受動的なプレーを好んでしまうことを改善したい、というのがこれらの変更に対するバランス評議会の意図となっています。
Queenのコストを上げることで大量のQueenを出しづらくする一方で、Hatcheryも安くすることで最序盤の影響を減らし、2種類の防衛施設をバフすることで防衛能力が落ちないようにする、という調整ですね。
Spore CrawlerのHP減少は、スーパーレイトゲームにおいてSpore Crawlerを大量に作って前進していくプレーが強くなりすぎないようにするため、ということのようです。
個人的にこの変更の意図はピンと来ていません。Queenの防御的なプレーが強力だから、防衛施設を使って守ってね、と言っているわけですが、Queenで守るより、防衛施設を使って守るほうがより防御的なのではないでしょうか…?
シンプルにザーグのQueenを使ったディフェンスの有用性を下げたいのであれば、防衛施設の強化はいらないように感じますが…。序中盤はともかく、防衛施設をバフすれば、中盤以降資源に余裕が出てきたときの防衛力が上がりますので、
キャンプツールを弱くする、というコンセプトにも反するように思います。
Hydralisk
- Muscular Augments研究完了時のオンクリープでの移動速度:5.11→4.83(5.5%減少)
マップの変更案
- ワーカーユニットの攻撃の射程:0.1→0.2に増加。
これは建築中のSCVを攻撃しにいったワーカーユニットが、そのSCVを見失って攻撃をやめてしまうことを減らすための変更とのこと。
- ワーカーユニットの内部半径(地形や建物とのコリジョンに使われる)→0.375→0.3125に減少。
これにより、「ワーカーのみ通れる道」を作ることができるようになるとのこと。
- 「Zerg Rocks」がオフクリープでHPを失うようになる。
これにより、「時間経過で壊れる岩」が作れるようになるとのこと。
- ミネラルフィールドが破壊可能なRock Towerで壊せるようになる。
その他バグ修正・QOL変更
たくさんあるので原文を御覧ください。一部抜粋
- OverlordがGenerate Creepした際、選択しているすべてのOverlordが行うようになる。
- Lurkerのサブグループ優先度がRavagerより上になる。
- TempestのTectonic Destabilizersアップグレードが、飛んでいる建物にも有効になる。
遊び方
PTRサーバーでの実装ですので、Blizzard APPのゲームバージョンで「パブリックテストサーバー」をインストールして遊んでみてください。
新マップ
新しいマッププール5つが公開されています。新マップは以下の5つです。
また、以下の4マップは続投となります。
なお、2vs2、3vs3、4vs4のマッププールも変更されています。過去に使用されていたマップのローテーションです。
まとめ
プロトス苦境がかなり長く続いている中、なかなか思い切った変更案が出てきたと思います。
プロトスにとってはかなりありがたいバランスパッチなのではないでしょうか。PvTの序盤は今までよりかなり安定しそうですし、レイトゲームも若干プレーしやすくなっています。
Widow MineというvP,vZに多く使用されるユニットがナーフされることでテランがどうなるかは注目ですね。
Widow Mineドロップという、プロに関わらず一般プレイヤーからも嫌がられていた戦術がナーフされることは、アマチュアにとっても遊びやすくなりそうです。