(11/1更新)24/10/22 5.0.14 PTRバランスアップデート案が公開されました
目次
Summary
更新
以下の内容は、24/10/31 5.0.14 PTRバランスアップデート案が更新されましたの内容に基づいて更新されています。
前回のパッチについて
最後のバランスアップデートから7ヶ月が経ち、ESL SpringやGSL、そして最大の大会でもあるEsports World Cupも終了しました。
前回のパッチでは、PvTにおけるCycloneやWidow Mineなどに調整が入り、PvTの改善を目指しましたが、
バランス評議会(Balance Council)はその目標が達成されたと感じているようです。
たしかにしばらく振るわなかったプロトスですが、Esports World CupではherOがベスト4に入るなど、一定の結果を残しました。herOが強かっただけなのでは?とか言わない!
バランスアップデート内容
これを踏まえて、シーズンオフである今、さらに野心的な目標を達成するための新しいバランスアップデート案が提示されています。
バランスアップデートの目的
- すべての種族の防御とキャンプのプレイスタイルを弱体化し、序盤からアクティブなプレーを促進する。
- プロトスツールを作り直し、高レベルなゲームプレイにおいてプロトスをやや効率的にする(かつ、低レベルにおいてT,ZがvPをやりやすくする)
- 様々なマッチアップに関して、強力なプレイスタイルの新しい選択肢を用意する
- どのレベルにも適用される、QOLの変更も引き続き入れていく
プロトスの変更案
Nexus
- Battery Overchargeアビリティを削除。
- 新アビリティ:Energy Rechargeを追加。50エナジーで60秒のクールダウン、射程8内の味方ユニットもしくは味方建築物のエナジーを100回復する。
「防御を弱体化」の一環の変更です。Battery Overchargeを「相対して最も苛立たしい能力」と捉え、かつSCVの修理やQueenのTransfusionに比べて低レベル帯で効果的だとしています。
代わりに実装されるEnergy Rechargeはエナジーを回復するため、Sentry、OracleやHigh Templarなどのエナジーを使って防衛するユニットの防衛能力を強化します。
もちろんShield Batteryにも使えますが、その使い方ではBattery Overchargeに比べるとかなり弱くなってしまいそうです。
プロトスの序盤防衛やハラス対応などに大きく役立っていたBattery Overchargeですので、この変更はかなり大きなインパクトがあるのは間違いないでしょう。
Battery Overchargeはユニットに耐えてもらうにしろ、相手が一旦引くにしろ、時間を稼ぐことができるスキルでしたが、Energy Rechargeでは時間稼ぎはかなり限定的になります。
序盤にエナジーユニットを使った防衛も多かったPvZはともかく、ユニットの戦闘力がものを言うPvTにおいて特に影響が出そうですので、後述するStalker、Cycloneの変更も合わせて入ります。
Shield Battery
- シールド/HP:150/150→200/200に増加
前述のBattery Overcharge削除でプロトスの防衛力が弱体化するため、それを補う調整です。最序盤にユニットを無視してShield Batteryを殴る動きのリスクが増えることになります。
ただBattery Overchargeが無い以上、Shield Batteryを殴る価値も落ちている(特にある程度のユニットがいる中盤以降)ため、この変更がどの程度効くかは若干不透明に感じます。
バランス評議会としては、この分野(Battery Overcharge削除におけるプロトス防衛の弱体化)はPTRを通じて注視し、追加の調整が必要かどうかを確認したいとのことです。
Stalker
- Gatewayからの生産時間:30秒→27秒に減少。
これはBattery Overchargeの削除により防衛が困難になるテランのラッシュオーダー、特にプロキシ2raxマローダーのようなビルドに対応するための変更とのこと。
防衛施設に頼るのではなく、ユニットをしっかり出して安定して守れるように、ということですね。防衛的なプレーを弱体化させるコンセプトとも一致します。
vTに限らず、どの種族相手でも序盤を安定させられる変更になるのではないでしょうか。
もっとも、この変更が攻撃的なプロトスビルドにどう影響するかは注視していきたいようです。
Colossus
- シールド/HP:150/200→100/250に変更
これもBattery Overcharge削除に伴う調整。中盤にBattery Overchargeで守りたいユニットの筆頭候補であるColossusの生存能力を上げるための変更です。
Battery Overchargeが無くなるのであれば、シールドを確保するよりもHPが多いほうが生存能力が上がりますし、EMP Roundにも強くなるほか、アーマーのアップグレードの恩恵も受けやすくなります。
Tempest
- サプライコスト:5→4に減少。
- 対空射程:14→13に減少
これは「プロトスツールの作り直し」に分類される変更でしょうか。
レイトゲームに対Brood Lordや対Liberatorで出てくることも多いTempestですが、
長射程を活かしたPokeでは強いものの、DPSが低いことから大規模戦闘ではあまり活躍ができませんでした。
それを受けて、高レベルプレーヤーがTempestを出しつつももう少し他のユニットを構成に詰め込めるようにサプライコストを減少。
ただし大規模なTempestの軍に強くなってほしい訳では無いことから、射程を1減らすという調整も加えています。
レイトゲームに活きてくる調整ですが、どの程度のインパクトがあるでしょうか?
Immortal
バランス評議会の意図としては、PvZにおけるImmortalのダメージ出力が高すぎるため、それを弱体化しつつ、埋め合わせに若干コストを落とすことで、ザーグがプロトスの中盤の攻撃に生き残りやすくする、というもののようです。
なかなかピンとこない調整ではありますが、コスト削減は最序盤の防衛にも役立ちそうではありますね。
Disruptor
- Purification Novaの効果範囲:1.375→1.5に増加。
- Purification Novaのダメージ:145(+55 vs Shield)→100(+100 vs Shield)に変更。
23年1月に範囲が減少した後、低レベル帯では未だに脅威であるものの、高レベル帯でのDisruptorの脅威は減少しました。
今回の変更は、以前のパワーを取り戻しつつダメージを下げることで、Disruptorの単独攻撃での「ペナルティ」を軽減する、という意図のようです。
これによりRoach、Ravager、Marauder、Hellbatなどのユニットをワンショットできなくなります。
テランは範囲が大きくなったことに文句を言い、プロトスはダメージが減ったことに文句を言っていたこの変更。どちらかといえばナーフにも見えますが、どうでしょうか?
Mothership
- ミネラル/ガス/サプライコスト→300/300/6サプライ→400/400/8サプライに増加
- シールド/HP:250/250→350/350に増加
- Abductの対象にならなくなる。
- 攻撃:6ダメージ×6ビーム→6ダメージ×4ビーム×4体に変更(つまり、4体のユニットを同時に攻撃できるようになる)
今回のバランス調整案で個人的に最もロマンを感じるのがこの変更。
23.9の変更でコスト・サプライ・サイズなどが減少、移動速度は増加、スキルのリワークなどが行われ使いやすくなり、確かにプロの試合でも以前より見かけるようになりました。
しかしMothershipが重要なアイデンティティを失った、というコミュニティからの意見もあったようで、今回の変更に至りました。
コストやサプライこそ上がったものの、早くなった移動速度や小さくなったサイズはそのままに、4体のユニットに同時に攻撃できるようになります。
ビームがいっぱい出る様子はなかなか壮観なので一度は試してみてください。
また、Abductで引っ張られなくなることで、その強力な能力を使いやすくなります。倒しに行きたければプロトス陸軍に殴られながらフォーカスしなくてはならなくなります。
テランの変更案
Cyclone
- Cycloneを5.0.11時点に戻す。
Cycloneは23年9月のパッチ5.0.12でリワークされ、Tech Labがいらず気軽に出せるオールラウンドユニットに生まれ変わりました。
気軽に出せるようになったことでどの種族相手でもよく使われましたが、特にTvPにおいてはテランの序盤の選択肢が増えると同時にプロトスの序盤の選択肢を減らし、強力なラッシュも生まれました。
これを5.0.11時点、つまりTech Labが必要でロックオン射程が長く、Armoredにボーナスダメージがある少し尖ったCycloneに戻すことで、プロトス序盤の多様性・安定性を確保したいとのことです。
個人的には昔のCycloneが好きでしたので嬉しい変更ではありますが(またヘリオンサイクロンやるぞ!!!)、攻めはともかく防衛にも役立つユニットでしたので、テランにとっては序盤のオーダーを再考する必要が出てきそうです。
Bunker,Sensor Tower
- SalvageアビリティをMissile Turret,Sensor Towerにも追加する。
- Salvageはダメージを受けると中止されるようになる。
- Salvageタイマーが敵にも見えるようになる。
サルベージの適用範囲を増やす変更。これにより、テランが防衛地点を変える際、不必要になった[Sensor Tower]]をサルベージできるため、移動する際の効率が上がる、というのがバランス評議会の意図のようです。
しかし序盤のバンカーラッシュなどの攻撃の際に、壊されそうになったバンカーをサルベージして資源を回収…といったことはできなくなります。
個人的にはちょっと意図が読めない変更です。気軽にSensor Towerをサルベージできるようになれば、とりあえず立てとくか後でサルベージできるし、となり、
弱体化させたかった防衛的、キャンプ的なプレーが促進されてしまうのでは?とも思うのですが…
Planetary Fortress
- アーマー:3→2に減少。
「終盤のキャンプツールを弱くする」意図の変更。大量のユニットで殴ることが多いこの建物のアーマーナーフにより、他種族からすると攻めやすくなりそうです。
Sensor Tower
これも「終盤のキャンプツールを弱くする」意図の変更のようです。センサータワーの範囲が減ることでマップ全体をカバーしづらくなり、キャンプしづらくなる…という意図らしいのですが、
コストが安くなったわけですし、いらなくなったらサルベージもできるようになったので、今までよりも気軽に序盤から立ててもいいよね!と考え、より防衛的になるのでは?という気もします。
ガスコストだけで見れば今までの1本と2本が同じなわけですし…
Orbital Command
- Calldown:Extra Suppliesアビリティは、Supply DepotのHPを500に増加させ(もとは400)、HPが減っている場合は即座に回復する。
バランス評議会の意図としては、上級者はこのスキルをあまり使わず、サプライが詰まったときに緊急で使うだけなので、他の価値をもたらしたい、というもの。
確かにこの変更で、割られそうなSupply Depotにすぐさまこのスキルを使って回復…というシーンが生まれるかもしれませんが、
それって「防衛的なプレーを弱くする」コンセプトからは逆行してるんじゃ?と思わないでもないです。とはいえ便利であることは間違いなさそうです。
Ghost
- サプライ:2→3に増加。
特にvZにおいてレイトゲームで大量に出てきて大活躍のGhost。Esports World Cup決勝でもClemのGhostが猛威を振るっていましたね。
その強さは長いこと槍玉に上がっており、ここ数回のパッチで少しずつナーフされてきていたのですが、それでもやっぱりまだ強すぎる、というフィードバックがプロからもコミュニティからもあるようです。
この変更により、Ghostそのものの性能は変わらないものの、今までのように大量のGhostを出すことは難しくなります。主にvZで大きく影響が出そうな変更です。
Thor
- Explosive Payloadのダメージ:6(+6 vs Light)→8(+4 vs Light)に増加
- Explosive Payloadのスプラッシュダメージ半径:0.5の100%ダメージ→0.5で100%ダメージ、0.75で75%ダメージ、1.25で50%ダメージ
- Explosive Payloadの攻撃射程:10→7に減少
ThorのExplosive PayloadはvsMutaliskにしか使われておらず、それ以外の面では25pxHigh Imapct Payloadのほうが強力なため、
Explosive Payloadに対して全く別のアプローチをしたい、というのがバランス評議会の意図のようです。
射程が減少した代わりに基礎ダメージ増加+スプラッシュダメージ半径増加で、スタックしているエアユニットに対して大きなダメージを入れられるようになりました。
VikingやVoid Rayなどを相手にする場合には強化といって良いかもしれません。
逆に射程が減少したことで、Mutalisk対策としては若干弱体化したのではないでしょうか(主にハラス対策面で)。
ザーグの変更案
Queen
Hatchery
Spore Crawler
- ダメージ:15→20に増加
- HP:400→300に減少
ZvT/ZvPにおける大量のQueenを使った防御的なプレーが強力であるため、テラン・プロトスが序盤に受動的なプレーを好んでしまうことを改善したい、というのがこれらの変更に対するバランス評議会の意図となっています。
Queenのコストを上げることで大量のQueenを出しづらくする一方で、Hatcheryも安くすることで最序盤の影響を減らし、2種類の防衛施設をバフすることで防衛能力が落ちないようにする、という調整ですね。
Spore CrawlerのHP減少は、スーパーレイトゲームにおいてSpore Crawlerを大量に作って前進していくプレーが強くなりすぎないようにするため、ということのようです。
Hydralisk
- Muscular Augments研究完了時のオンクリープでの移動速度:5.11→4.83(5.5%減少)
- 新スキル:Frenzy(名前は未定)を追加。Hydralisk Denで研究、コストは100/100、研究時間は64秒。
- Frenzyは10秒のクールダウンを持つアクティブアビリティで、地点を指定して使用するとHydraliskの移動速度が0.71秒の間100%増加する。
この変更の意図は、HydraliskにPsionic StormやPurification Novaなどから逃げるマイクロができるようにすることと、
後述するMicrobial Shroudの変更と合わせ、スカイトスに対して地上ユニットを中心としたザーグ構成の選択肢を増やしたい、とのことのようです。
Muscular Augmentsのわずかな弱体化は、新スキル実装によりT,Pのハラス能力が落ちることを懸念してのものとのこと(だからオンクリープの移動速度のみ落ちています)
これは「新たな選択肢」コンセプトの一貫ですね。Hydraliskは移動速度上昇やキビキビ動作などマイクロポテンシャルが少しずつ強化されてきましたが、ここでさらなる強化を得ることとなります。
移動速度上昇はわずか0.71秒ですので、イメージとしては超短距離ブリンクといったほうが近いかもしれません。実際試してみると結構楽しく動きますので、ワクワクする変更の一つですね。
Infestor
飛行ユニットからのダメージを50%軽減というとんでもない効果にもかかわらず、範囲内にいる必要があるということでAOEにとっても弱く、Hydraliskが焼け死んでしまうという致命的な弱点を抱えていたMicrobial Shroudですが、
この変更は前述した新スキルと合わせてしっかりとマイクロすることでこれまでよりもプロトス(に限りませんが)空軍と渡り合いやすくなったのではないでしょうか。ユニットが使いやすくなる良い変更だと思います。
Ultralisk
- Ultraliskは移動中に味方ユニットを押し出せるようになる。
Anabolic Synthesis(クリープ外の移動速度アップ)研究の移動速度アップ効果:0.82→0.59に減少。
Ultraliskが詰まる!はザーグ永遠の問題ですが、この解決のためにこれまでもオフクリープの移動速度アップ研究がついたり、ユニットサイズが小さくなったりしてきましたが、
ここに来て最強の解決策がついにテストされます。意図はシンプル、どんなレベルのプレーヤーでもウルトラが味方ユニットの後ろに隠れてしまわないように、です。
ザーグからするとワクワクする変更だと思いますが、他種族からするとちょっと怖い変更でもありますね…。
移動速度アップ研究の弱体化は、もともと詰まらなくなるように実装された研究のため、別の手段によって詰まらなくなるのなら弱体化して強くなりすぎないように、という意図とのことです。
バグ修正&QOL変更
- Scanner Sweepのビジュアルにチームカラーが使用されるようになる。
- Sensor Towerのレーダーのミニマップビジュアルにチームカラーが使用されるようになる。
- Command Center、Nexus、Hatcheryのラリーが自動でミネラルフィールドに向かうようになる。
- Refinery、Extractor、Assimilatorの建築終了を待っているワーカーユニットはアイドル状態としてカウントされなくなる。
- 建築中の移動におけるSCVのランダム遅延を3.57-7.14 から4.64-6.07(同じ平均)に調整。
- Infestor、Hellion、Hellbat、Liberatorのコマンドカードに、アップグレードされていないパッシブアビリティを示すアイコンを追加。
- 意図しない再ターゲットを引き起こしたため、以前のパッチからのSiege TankとImmortalのトラッキングの変更が元に戻された。
- Blinding Cloudにより、特定の近接ユニットの攻撃がキャンセルされやすくなる問題を修正。
- Blinding Cloudにより、Planetary Fortressが特定の角度で近接範囲のユニットを攻撃しない問題を修正。
- Fog内において特定の種類の岩に命令を出す際の問題を修正。
- ChangelingのZealotの移動アニメーション速度に関する問題を修正。
- Hydraliskの移動アニメーション速度を実際の移動速度に合わせて調整(アートのみ)。
- 25pxGravaton Beamがテレポート・移動アビリティによって0.04秒以内にキャンセルされることがある問題を修正。
- Lurkerの攻撃が、ターゲットが範囲外になる/死亡するなどで攻撃範囲から出た場合にキャンセルされることがある問題を修正。
遊び方
PTRサーバーでの実装ですので、Blizzard APPのゲームバージョンで「パブリックテストサーバー」をインストールして遊んでみてください。
新マップ
新しいマッププール6つが公開されています。
https://x.com/GGemini19/status/1848426725904113860
まとめ
23-24のEスポーツシーズンが終わり、来年以降の情報がまだ出てこない中、こういった大規模バランスパッチの情報が出てきたのは嬉しいことだと思います。
新スキルや新仕様を含む、ここまでの規模の大規模パッチを実装するだけの人員がまだSC2に割かれているというのも嬉しいことですね。
内容に関しては、MothershipやHydralisk、Ultraliskのような使う人がワクワクするようなものもありつつ、
Liberatorの超強化やBattery Overchargeの削除のようにこれ大丈夫なのか…?と思うようなものもあり、
防衛的なプレー、キャンププレーの弱体化を目指しながら防衛施設を強化したりしてコンセプトからズレているのでは・・・?と感じるようなところもあったりもしたのですが、
その後のコミュニティの反応やテストのフィードバックを受け、新たな変更が加わったり、評判が悪いものは削除されたりと、コミュニティの意見が反映された点はこれまでと異なりかなり良かったのではないでしょうか。
QOL系の変更には地味に嬉しいものも揃っていましたし、こういう変更を今でも入れてくれるのはありがたいです。
あとはそろそろ、2025年のEスポーツについての情報が公開されてほしい!(Maruが2026年までVitalityと契約延長したので、大丈夫だとは思いますが)
みなさんもぜひPTRで変更を遊んでみてください!