24/11/25 5.0.14 バランスアップデートが適用されました
目次
Summary
これまでの経緯
10/22に久しぶりのバランスアップデート案が公開されましたが、
なぜかプロシーンで結果を出せていないプロトスが弱体化されていたり、防衛的なプレーを弱体化させると言いながら防衛施設がバフされたり、なぜかLiberatorがバフされたり、懸念されていたGhostに対する言及が一切なかったりと
どうも芯を食っていない調整案に対してコミュニティやプロゲーマー、キャスターらがおおむねネガティブに反応し、ここ数年で見たこと無いくらいコミュニティが活気づきました。
それを受けてか、10/31にさらなるバランス調整案が登場。こちらはコミュニティの意見が多く反映されていて、評判も上々。やればできるじゃん!という空気になりました。
そこからおよそ1ヶ月、今までのPTRでは考えられないくらいしっかりと時間をかけてテストが行われ、いくつかの変更が追加、あるいは削除された上で、今回ようやくバランスアップデートが適用になっています。
バランスアップデート
バランスアップデートの目的
- すべての種族の防御とキャンプのプレイスタイルを弱体化し、序盤からアクティブなプレーを促進する。
- プロトスツールを作り直し、高レベルなゲームプレイにおいてプロトスをやや効率的にする(かつ、低レベルにおいてT,ZがvPをやりやすくする)
- 様々なマッチアップに関して、強力なプレイスタイルの新しい選択肢を用意する
- どのレベルにも適用される、QOLの変更も引き続き入れていく
プロトス
Nexus
- Shield Batteryがフルエナジーで建築される最大距離:10→12に増加。
- Battery Overchargeアビリティを削除。
- 新アビリティ:Energy Rechargeを追加。50エナジーで60秒のクールダウン、射程12内の味方ユニットもしくは味方建築物のエナジーを100回復する。
「防御を弱体化」の一環の変更です。Battery Overchargeを「相対して最も苛立たしい能力」と捉え、かつSCVの修理やQueenのTransfusionに比べて低レベル帯で効果的だとしています。
テストにおいてはプロトスで定着し、偵察(おそらくSentryを使ったもの)や防衛に役立っているようです。
Shield Batteryのフルエナジー距離とEnergy Rechargeアビリティの射程(10→12)に関しては、PTRになかった変更です。
これによりPvTにおける序盤戦をより安定させるほか、拡張時により柔軟にShield Batteryを配置しやすくなることを目的としているようです。
Shield Battery
- シールド/HP:150/150→200/200に増加
前述のBattery Overcharge削除でプロトスの防衛力が弱体化するため、それを補う調整です。最序盤にユニットを無視してShield Batteryを殴る動きのリスクが増えることになります。
フルエナジー距離の増加と合わせて、拡張時にも役立ちそうですね。
Stalker
- Gatewayからの生産時間:30秒→27秒に減少。
これはBattery Overchargeの削除により防衛が困難になるテランのラッシュオーダー、特にプロキシ2raxマローダーのようなビルドに対応するための変更とのこと。
防衛施設に頼るのではなく、ユニットをしっかり出して安定して守れるように、ということですね。防衛的なプレーを弱体化させるコンセプトとも一致します。
vTに限らず、どの種族相手でも序盤を安定させられる変更になるのではないでしょうか。
Colossus
- シールド/HP:150/200→100/250に変更
これもBattery Overcharge削除に伴う調整。中盤にBattery Overchargeで守りたいユニットの筆頭候補であるColossusの生存能力を上げるための変更です。
Battery Overchargeが無くなるのであれば、シールドを確保するよりもHPが多いほうが生存能力が上がりますし、EMP Roundにも強くなるほか、アーマーのアップグレードの恩恵も受けやすくなります。
Tempest
- サプライコスト:5→4に減少。
- 対空射程:14→13に減少
これは「プロトスツールの作り直し」に分類される変更でしょうか。
レイトゲームに対Brood Lordや対Liberatorで出てくることも多いTempestですが、
長射程を活かしたPokeでは強いものの、DPSが低いことから大規模戦闘ではあまり活躍ができませんでした。
それを受けて、高レベルプレーヤーがTempestを出しつつももう少し他のユニットを構成に詰め込めるようにサプライコストを減少。
ただし大規模なTempestの軍に強くなってほしい訳では無いことから、射程を1減らすという調整も加えています。
Immortal
バランス評議会の意図としては、PvZにおけるImmortalのダメージ出力が高すぎるため、それを弱体化しつつ、埋め合わせに若干コストを落とすことで、ザーグがプロトスの中盤の攻撃に生き残りやすくする、というもののようです。
DPSは落ちるものの、コスト削減は最序盤の防衛にも役立ちそうではありますね。
Disruptor
- Purification Novaの効果範囲:1.375→1.5に増加。
- Purification Novaのダメージ:145(+55 vs Shield)→100(+100 vs Shield)に変更。
23年1月に範囲が減少した後、低レベル帯では未だに脅威であるものの、高レベル帯でのDisruptorの脅威は減少しました。
今回の変更は、以前のパワーを取り戻しつつダメージを下げることで、Disruptorの単独攻撃での「ペナルティ」を軽減する、という意図のようです。
これによりRoach、Ravager、Marauder、Hellbatなどのユニットをワンショットできなくなります。
Mothership
- モデルサイズが以前(5.0.10)の値に戻りました。(増加しました。)
- ミネラル/ガス/サプライコスト→300/300/6サプライ→400/400/8サプライに増加
- シールド/HP:250/250→350/350に増加
- Abductの対象にならなくなる。
- 攻撃:6ダメージ×6ビーム→6ダメージ×4ビーム×4体に変更(つまり、4体のユニットを同時に攻撃できるようになる)
今回のバランス調整案で個人的に最もロマンを感じるのがこの変更。
23.9の変更でコスト・サプライ・サイズなどが減少、移動速度は増加、スキルのリワークなどが行われ使いやすくなり、確かにプロの試合でも以前より見かけるようになりました。
しかしMothershipが重要なアイデンティティを失った、というコミュニティからの意見もあったようで、今回の変更に至りました。
コストやサプライこそ上がったものの、早くなった移動速度はそのままに、4体のユニットに同時に攻撃できるようになります。
また、Abductで引っ張られなくなることで、その強力な能力を使いやすくなります。倒しに行きたければプロトス陸軍に殴られながらフォーカスしなくてはならなくなります。
その代わり、PTRになかった変更として、モデルサイズが以前の値に戻りました。Abductで引っ張られないのであれば、ザーグ側がフォーカスファイアしやすいようにしよう、という意図のようです。
テラン
Cyclone
- Cycloneを5.0.11時点に戻す。
Cycloneは23年9月のパッチ5.0.12でリワークされ、Tech Labがいらず気軽に出せるオールラウンドユニットに生まれ変わりました。
気軽に出せるようになったことでどの種族相手でもよく使われましたが、特にTvPにおいてはテランの序盤の選択肢が増えると同時にプロトスの序盤の選択肢を減らし、強力なラッシュも生まれました。
これを5.0.11時点、つまりTech Labが必要でロックオン射程が長く、Armoredにボーナスダメージがある少し尖ったCycloneに戻すことで、プロトス序盤の多様性・安定性を確保したいとのことです。
個人的には昔のCycloneが好きでしたので嬉しい変更ではありますが(またヘリオンサイクロンやるぞ!!!)、攻めはともかく防衛にも役立つユニットでしたので、テランにとっては序盤のオーダーを再考する必要が出てきそうです。
Bunker,Sensor Tower
- SalvageアビリティをSensor Towerにも追加する。
- Salvageはダメージを受けると中止されるようになる。
- Salvageタイマーが敵にも見えるようになる。
サルベージの適用範囲を増やす変更。これにより、テランが防衛地点を変える際、不必要になった[Sensor Tower]]をサルベージできるため、移動する際の効率が上がる、というのがバランス評議会の意図のようです。
しかし序盤のバンカーラッシュなどの攻撃の際に、壊されそうになったバンカーをサルベージして資源を回収…といったことはできなくなります。
Planetary Fortress
- アーマー:3→2に減少。
「終盤のキャンプツールを弱くする」意図の変更。大量のユニットで殴ることが多いこの建物のアーマーナーフにより、他種族からすると攻めやすくなりそうです。
Sensor Tower
これも「終盤のキャンプツールを弱くする」意図の変更のようです。センサータワーの範囲が減ることでマップ全体をカバーしづらくなり、キャンプをしづらくする目的とのこと。
ただコストも安くなっているので、複数本立てやすくなっている気もします。
Orbital Command
- Calldown:Extra Suppliesアビリティは、Supply DepotのHPを500に増加させ(もとは400)、HPが減っている場合は即座に回復する。
バランス評議会の意図としては、上級者はこのスキルをあまり使わず、サプライが詰まったときに緊急で使うだけなので、他の価値をもたらしたい、というもの。
確かにこの変更で、割られそうなSupply Depotにすぐさまこのスキルを使って回復…というシーンが生まれるかもしれませんね。
Ghost
- サプライ:2→3に増加。
特にvZにおいてレイトゲームで大量に出てきて大活躍のGhost。Esports World Cup決勝でもClemのGhostが猛威を振るっていましたね。
その強さは長いこと槍玉に上がっており、ここ数回のパッチで少しずつナーフされてきていたのですが、それでもやっぱりまだ強すぎる、というフィードバックがプロからもコミュニティからも多くありました。
この変更により、Ghostそのものの性能は変わらないものの、今までのように大量のGhostを出すことは難しくなります。主にvZで大きく影響が出そうな変更です。
Thor
- 変更なし
もともとはExplosive Payloadのダメージや射程の変更がPTRでテストされていましたが、テラン・他種族の両方から、新しいプレースタイルは生まれないのに既存のプレースタイルに悪影響が及ぶとうフィードバックがあり、
イマイチな評判だったので削除されました。ただし、Thor調整の可能性はまだあると考えているようです。
ザーグ
Queen
Hatchery
Spore Crawler
- ダメージ:15→20に増加
- HP:400→300に減少
ZvT/ZvPにおける大量のQueenを使った防御的なプレーが強力であるため、テラン・プロトスが序盤に受動的なプレーを好んでしまうことを改善したい、というのがこれらの変更に対するバランス評議会の意図となっています。
Queenのコストを上げることで大量のQueenを出しづらくする一方で、Hatcheryも安くすることで最序盤の影響を減らし、Spore Crawlerをバフすることで対空防衛力が落ちないようにする、という調整ですね。
Spore CrawlerのHP減少は、スーパーレイトゲームにおいてSpore Crawlerを大量に作って前進していくプレーが強くなりすぎないようにするため、ということのようです。
Hydralisk
- Muscular Augments研究完了時のオンクリープでのスピードボーナス:1.03→0.74に減少。
- 新研究:Nanomuscular Swellを追加。Hydralisk Denで研究、コストは100/100、研究時間は64秒。Lungeアビリティを使用可能にする。
- 新スキルLunge}は10秒のクールダウンを持つアクティブアビリティで、地点を指定して使用するとHydraliskの移動速度が0.71秒の間100%増加する。
この変更の意図は、HydraliskにPsionic StormやPurification Novaなどから逃げるマイクロができるようにすることと、
後述するMicrobial Shroudの変更と合わせ、スカイトスに対して地上ユニットを中心としたザーグ構成の選択肢を増やしたい、とのことのようです。「新たな選択肢」コンセプトの一貫ですね。
Muscular Augmentsのわずかな弱体化は、新スキル実装によりT,Pのハラス能力が落ちることを懸念してのものとのこと(だからオンクリープの移動速度のみ落ちています)
Hydraliskは移動速度上昇やキビキビ動作などマイクロポテンシャルが少しずつ強化されてきましたが、ここでさらなる強化を得ることとなります。
Lungeの移動速度上昇はわずか0.71秒ですので、イメージとしては超短距離ブリンクといったほうが近いかもしれません。実際試してみると結構楽しく動きますので、ワクワクする変更の一つですね。
Infestor
飛行ユニットからのダメージを50%軽減というとんでもない効果にもかかわらず、範囲内にいる必要があるということでAOEにとっても弱く、Hydraliskが焼け死んでしまうという致命的な弱点を抱えていたMicrobial Shroudですが、
この変更は前述した新スキルと合わせてしっかりとマイクロすることでこれまでよりもプロトス(に限りませんが)空軍と渡り合いやすくなったのではないでしょうか。ユニットが使いやすくなる良い変更だと思います。
Ultralisk
- Ultraliskのプッシュ優先度を0→1に増加。(つまり、移動中に攻撃中の味方ユニットを押し出せるようになる。)
- Anabolic Synthesis(クリープ外の移動速度アップ)研究の移動速度アップ効果:0.82→0.59に減少。
- モデルサイズを5.0.10の値に変更(増加)
Ultraliskが詰まる!はザーグ永遠の問題ですが、この解決のためにこれまでもオフクリープの移動速度アップ研究がついたり、ユニットサイズが小さくなったりしてきましたが、
ここに来て最強の解決策がついにテストされます。意図はシンプル、どんなレベルのプレーヤーでもウルトラが味方ユニットの後ろに隠れてしまわないように、です。
ザーグからするとワクワクする変更だと思いますが、他種族からするとちょっと怖い変更でもありますね…。
移動速度アップ研究の弱体化は、もともと詰まらなくなるように実装された研究のため、別の手段によって詰まらなくなるのなら弱体化して強くなりすぎないように、という意図とのことです。
PTRではなかったモデルサイズの増加も同様の意図です。
Lurker
今回のパッチでDisruptorのダメージ変更《145(+55 vs Shield)→100(+100 vs Shield)》が入りましたが、
これによりLurkerが体力回復込みで2ショットで死なない可能性が出てくるため、確実に2ショットできるように、という意味でのHP減少とのこと。
視界の変更は、現在Lurkerの視界と攻撃範囲(Seismic Spines時)が一致しており、それによって角度により攻撃範囲が僅かに異なるという問題が発生しており、それを修正するためとのことです。
バグ修正&QOL変更
- Scanner Sweepのビジュアルにチームカラーが使用されるようになる。
- Sensor Towerのレーダーのミニマップビジュアルにチームカラーが使用されるようになる。
- Command Center、Nexus、Hatcheryのラリーが自動でミネラルフィールドに向かうようになる。
- Refinery、Extractor、Assimilatorの建築終了を待っているワーカーユニットはアイドル状態としてカウントされなくなる。
- 建築中の移動におけるSCVのランダム遅延を3.57-7.14 から4.64-6.07(同じ平均)に調整。
- Infestor、Hellion、Hellbat、Liberatorのコマンドカードに、アップグレードされていないパッシブアビリティを示すアイコンを追加。
- 意図しない再ターゲットを引き起こしたため、以前のパッチからのSiege TankとImmortalのトラッキングの変更が元に戻された。
- Blinding Cloudにより、特定の近接ユニットの攻撃がキャンセルされやすくなる問題を修正。
- Blinding Cloudにより、Planetary Fortressが特定の角度で近接範囲のユニットを攻撃しない問題を修正。
- Fog内において特定の種類の岩に命令を出す際の問題を修正。
- ChangelingのZealotの移動アニメーション速度に関する問題を修正。
- Hydraliskの移動アニメーション速度を実際の移動速度に合わせて調整(アートのみ)。
- 25pxGraviton Beamがテレポート・移動アビリティによって0.04秒以内にキャンセルされることがある問題を修正。
- Lurkerの攻撃が、ターゲットが範囲外になる/死亡するなどで攻撃範囲から出た場合にキャンセルされることがある問題を修正。
- Cycloneのロックオン範囲に関する問題を修正。
バランス評議会現在の懸念
アップデートは実装されましたが、内容についてバランス評議会はいくつか懸念があるようです。
Ghost弱体化について
Ghostの弱体化については、複数のプロのテラン プレイヤーから大きな懸念が寄せられており、バランス評議会のメンバーの間でもこの変更に関する意見が完全に一致しなかったとのこと。
しかし、この変更はコミュニティの希望ため、Ghostのサプライ増加は勧めつつ、TvZ、TvPの両方の対戦での影響を引き続き注意深く監視したいと考えているようです。
ZvPについて
Mothershipがひっぱられなくなり、Tempestのサプライコストも減り、ゲーム後半のプロトス軍全体が強化されたため、全てのレベルでZvPがゲーム後半でどのような状態になるか懸念があるとのこと。
これに対処するために実験的な変更がいくつか提案されたものの、大規模なテストが必要となり、パッチのリリースが大幅に遅れることになるため、現時点では実験的な変更は行わず、今後ZvPを注意深く監視することにしたようです。
新マップ
新マップ6つが追加されています。
残り3マップには、なぜか
という大昔のマップが採用されています。おそらく不具合だと思うのですが…パッチ適用後すぐは新マップ6つだけだったので、何かの間違いだと思いたいですね。
まとめ
最初出てきたときはこれは大丈夫なのか・・・?と思いましたしコミュニティも大荒れだったものの、その甲斐あってかすぐに軌道修正されましたね。
テスト期間が長かったことも好印象ですし、最終的な内容もコミュニティが求めるようなものが割と出てきたのではないかと思います。
プロトスがかなりプレーしやすくなるパッチですが、これでプロトス久しぶりの大規模大会優勝が起こるでしょうか・・・?
コミュニティの意見をかなり取り入れたパッチではありますが、これで実際バランスが良くなるかどうかはまだプレーしてみないとわかりません。
実際バランス評議会も色々と懸念があるようなので、問題があれば今後新たな調整が入るのではないでしょうか。
大規模アップデートの後のフォローアップの細かい調整もぜひ入れていって欲しいと思います。
とりあえず新バランス&新マップでみなさんラダーの海に飛び込みましょう!