20/4/29 バランスアップデート案が公開されました。
目次
Summary
- https://news.blizzard.com/en-us/starcraft2/23405326/balance-update-april-28-2020
- 開発チームの現在の各マッチアップへの考え方を合わせて、久々のバランス調整案が出ています。
詳細
去年の12月に入ったバランスアップデートから4ヶ月、沈黙を続けてきたバランスチームですが、ここに来て現在のバランスについての考え方、それに基づいたバランス調整案が公開されました。
すでにBalance Test Modにも変更が実装されていますので、ぜひ皆さんも遊んでみましょう。
各マッチアップへのバランスチームの考え
今回のバランス調整案のベースとなる、バランスチームの各マッチアップへの考えをまとめていきます。もしかしたら今後のアップデートのベースになるかもしれませんね。
TvZ
- 現在のマッププールにおいて、マッチアップはゲームプレイ、バランスともに良好。
- 昨年のパッチ後(Thorのバフ等もあり)メックテランの使用率がぐっと増えた後また一気に減り、現在はバイオがTのメイン構成となっているため、新マップと合わせてメックの復活を図りたい。
- ザーグのミッドゲームの戦略の多様性に加え、Brood Lordでのタートルプレイが過去のものになったことも満足している。
マッチアップそのものには満足しているものの、テランのメック構成の使用率の低下が懸念材料のようです。
個人的にはバイオVSザーグのエキサイティングなプレーがまた多く観られるようになったので嬉しく思っていますが・・・。
TvP
- バランスはイーブンで、昨年多く観られたような1つのプッシュでゲームが突然終わってしまう試合は減った。
- とはいえ多くのゲームでその手のプッシュがミッドゲームを支配しており、そこに改善の余地があると考えている。
- 今後このマッチアップで行う変更はバランス調整よりはミッドゲームの多様性を増やすことを意図して行われるだろう。
2ベースタンクプッシュが刺さるか刺さらないか、のような試合は減ったものの、まだそういう試合がミッドゲームのテラン側の戦略の中心となっているため、ここを改善したいとのことですね。
ZvP
- いいニュースとして、Z,P側どちらにもアーリーゲーム、ミッドゲームの多様な戦略が見られる。
- P側は多くのオープニングとその改良版が、Z側はSC2の歴史上もっとも多様なミッドゲームのユニット構成を確認できる。
- とはいえこのマッチアップは主にレイトゲームにおいてZ側に有利だと感じている。プロのPプレイヤーからは以下のような問題が報告された。
- Queenのアーリーゲームのプレッシャーへの防御性能の高さ
- Banelingが戦闘ユニットとしてもハラスユニットとしても強力である。
- ミッド/レイトゲームにおいて、クリープ処理が全軍を動かしていかない限り困難である。
- ViperのAbductとHigh TemplarFeedbackとの攻防において(P側が)難しさを感じている。
後述するプロトスの長期における不調もありますが、ZvPにおいてはザーグがレイトゲームで有利という見解のようですね。
TvT,ZvZ
- いい状態で、特にTvTは昨年よりもダイナミックな試合が増えた。
PvP
- MSC削除以降の問題である序盤の落ち着きの無さとそれによるセカンド防衛の困難さ、サード防衛の困難さがPvPの主な問題だと捉えている。
- 序盤に関してはプロキシRobotics Facilityがメタゲームの中心におり、セカンドを落ち着いて取ることが難しくなっている。
- サード防衛に関してはColossus,Disruptorがメインだった時代に比べてディフェンダーズアドバンテージが少ないことが原因と見ている。
バランス調整案
上記のバランスチームの各マッチアップへの考えを踏まえたバランス調整案は以下の通りです。
テランの変更案
Widow Mine
- Drilling ClawsはWidow Mineバロウ時の常時クロークを与えなくなり、代わりにArmoryが与えるようになる。
- Widow Mineの赤いレーザーはArmoryの存在(つまりバロウ時の常時クローク)を通知し、Drilling Clawsの終了は通知しない。
分かりづらいですが、Widow Mineのバロウ時常時クローク機能と潜り速度上昇を別にし、前者をArmoryに、後者をDrilling Clawsアップグレードに担わせるという変更です。
TvPにおいてT側はP側に資源でビハインドを追うことが多く感じているものの、TvZのことを考えるとTの資源採掘を強化することは難しいため、P側の内政を削りやすくしたい、というのが意図となります。
プロトスにとっては序盤のディテクターの重要性やベース防衛の難易度も上がるため、非直接的な内政への負担にもなりますね。テランの2-2がスムーズに入れられるように、という意図もあるようです。
元記事ではTvPについてのみ言及がありますが、TvZにおいてはバロウ時常時クロークよりも潜り速度アップのほうが重要になるため、大きな影響はないということでしょうか?
ザーグの変更案
Queen
- Queenの対空射程:8→7に減少
Liberator(レンジアップ含む)に対処するために対空射程が1増えたのが2016年。現在はプレイヤー側の対処能力も上がったほか、レンジアップLiberatorの射程も1減少したので、これを戻したいとのこと。
Queenの防衛性能の高さはコミュニティでも問題になるところですが、エアユニットへの対処能力を下げる方向で調整案が出てきましたね。
開発チームの最大の懸念はやはり当時は存在しなかったBattlecruiserハラスへの対処です。プロシーンでは以前に比べて減ったもののラダーではまだまだ多く見かけるのではないでしょうか。
とはいえもしこの変更によりBattlecruiserハラスへの対処が困難になった場合は、むしろBattlecruiserのほうを調整対象にすることを考えているとのことなので、ひとまず様子見という所ですね。
Baneling
- Centrifugal HooksのBanelingの体力+5増加→削除。
- Centrifugal Hooksのコスト:150/150→100/100に減少。
ザーグがミッドゲームに苦しんで居た頃に追加されたコロコロ研究の体力増加機能ですが、現在はテランプロトス双方から正面戦闘にハラスに建物破壊にと強力すぎるというフィードバックがあったことにより、この調整となりました。
とはいえシンプルな弱体化によって3ベースバイオテランのフォースへの攻撃を防ぐことが困難になる懸念がフィードバックとしてあったため、コストを下げることで研究自体は入れやすくするようです。
Infestor
新しいスキル生成時にはまず強力なスキルとして実装し、状況を観て弱体化していくのがセオリーとのことですが、ザーグの去年のパフォーマンスではそれが難しく、結果としてMicrobial Shroudは誰にも使ってもらえずスキルとしての評価が出来ない状態です。
研究不要にすることで、とりあえず使ってもらって評価をしたいのではないでしょうか。
え?キーの押し間違いで間違って使ってしまう危険が生じたから実質Nerfだって?そんなこと言わないの!
Creep Tumor
- 「Armored」タグを除去し、「Light」タグを付与する。
非常に実験的な変更となります。クリープはザーグの強さの源ですが、このクリープをHellion,Adept,Oracleなどの少数のユニットでも処理しやすくしたいというのが主な意図となります。
現在HellionがCreep Tumorをワンショットするには7体必要ですが、この変更があればこれを4体まで抑えられます。Adeptなら5→3ですね。
今回の変更案の中でも最もフィードバックを求めている変更の1つとなります。
プロトスの変更案
Nexus
- 新アビリティ:Battery Overcharge
- 対象のShield Batteryのシールド回復レートを100%増加させ、21秒で100エナジーを回復させる。
- コスト75エナジー、クールダウン0秒、射程8。
(主にPミラーにおける)プロトスのディフェンダーズアドバンテージを増加させるための新スキルとなります。
各数値もPミラーを前提に調整されており、4Stalker1Immortalの一斉射撃に7発まで耐える(通常のShield Batteryでは2発)とのこと。
これによりプロキシロボからセカンドを、敵ゲートウェイ構成からサードを守りやすくすることを意図しています。
他マッチアップに対してはRavagerやBanelingで壊してしまう、Siege TankやLurkerでシージする、EMP Roundを使うなどのカウンターが多く存在するため、大きなインパクトは与えないのではないかという判断ですね。
スキルとしては懐かしの悪名高いパイロンオーバーチャージにそっくりですが、このスキル単体で防衛できるわけではなく、よほどクリエイティブでなければ攻めにも使えない、というのが本スキル実装の一因とのこと。
このスキルで注意なのが「スキル射程」の存在。射程は8なのでプロキシしたShield Batteryにかけることは出来ない他、守りたいベースにエナジーが残っていなければ使えません。
今回の変更案の中でも最もテストしたい変更のため、フィードバックを強く求めており、それによって数値を調整したいとのことです。
Oracle
この変更はOracleの敵位置の確認能力を下げる代わりに、ディテクター能力、そしてCreep Tumorの処理能力を上げることが目的となります。
すでに紹介したWidow MineやCreep Tumorの変更とセットの変更ということになりますね。
High Templar
ViperのAbductが低リスクの割に対象指定でCarrierなどの高テックユニットを簡単に倒せてしまう、という指摘はコミュニティからも多くありますが、
この変更はAbduct(射程9)との関係性改善が主な目的となります。
理論上は引っ張ろうと近づいてきたViperに先んじてFeedbackを当てることができるようになりますね。
またこの変更はEnhanced Shockwaveが入ったGhostに対しても有効に働くことになるでしょう。
まとめ
全体的に見るとテランはややbuff、プロトスはbuff、ザーグはnerfという調整案になります。
ザーグプレイヤーからすると昨年の大規模パッチからnerfばかりで嫌になってしまう面もあるかと思います。
調整は基本的にはプロシーンを前提に行われ、現状プロシーンをザーグが支配しているのは確かなようです。
Aligulacのデータによるとザーグは2019年3月から1年以上リーディングレースとなっている他、
20年4月のプロトスはSC2の歴史上最も一月のパフォーマンスが悪かった種族だった、というデータも出ています。
以下のデータに基づくものです。
http://aligulac.com/periods/
Leadingは最も強い種族、Laggingは最も弱い種族で、数字の%は詳細は省きますが「各種族トップ5プレイヤーが他種族に比べてどのくらい強い/弱いか?」を表します。この値が小さいほどトッププレイヤー層での種族間格差が小さいことになります。
とはいえプロシーンの事情とラダーでの自分の体験はメタもバランスも異なることは珍しくありませんので、ザーグプレーヤーからすれば理不尽に感じてしまうのも無理無いかと思います。
上記のデータもバランスの問題だけではなく、EUにおけるSerral,Reynorの存在やプロトストッププレイヤーの引退、不在が影響している面も少なからずあるでしょう。
この変更案は実験的なものも多く、またあくまで「案」に過ぎないので、このまますべてがライブ環境に適用される可能性はそこまで高くないと思われます。
とりあえずはテストの結果を待ちましょう。もちろん皆さんもTest Modで遊ぶことが可能です。実際に遊んで確かめてみましょう!