2019 World Championship Seriesの詳細が公開されました。
目次
Summary
- https://wcs.starcraft2.com/en-us/news/22820917/StarCraft-II-Esports-in-2019/
- 基本的には2017-18年のシステムを踏襲していますが、変更点もいくつかあります。詳しくは記事へどうぞ。
2019年のWorld Championship Series
Blizzardから2019年のWorld Championship Seriresのシステムがようやく発表されました。→こちら
通常2018年内に発表されるはずのWCS 2019がなかなか発表されず一部の大会の告知にとどまっていたほか、
Activision Blizzard本体の減収減益、Heroes of the StormのEスポーツシーンの中止などマイナス要素があり、WCS2019について不安に思っていた人も多かったと思いますが、
基本的には2017,18年のシステムを踏襲し、規模もさほど変わらない全体像が公表されました。
とりあえずは一安心といった所でしょうか。
WCS 2019の要点を簡潔にまとめると以下の通りです。
- WCS Koreaは2018年同様、3回のGSLと2回のSuper Tournamentで争われる。
- WCS Circuitも2018年同様4回の大規模イベントにより構成されるが、大会形式や運営母体に変更がある。
- BlizzconのWar Chest資金がランキング9位~16位のプレーヤーにも賞金として与えられるなど、賞金がより「広く」与えられるようになる。
それでは2019年のWCSシステムについてもっと細かく見ていきましょう。
全体の流れ
2016~2018年と同様に、WCSには海外選手(及び正式なビザを持つ韓国選手)が参加できる「WCS Circuit」と韓国選手を中心とした「WCS Korea」の2種類の枠組みが設けられ、
それに加えてCircuit、Koreaどちらの選手も参加可能なWCS Global Eventが存在する、といった形になります。それぞれの枠組みについては後で解説していきます。
WCS Circuit、Koreaそれぞれが大会の成績に応じて選手にWCSポイントを付与します。そのWCSポイントにより、Circuit、Koreaそれぞれがプレイヤーランキングを決定します。
1年の終わりにはCircuit、Koreaのランキング上位各8人、合計16人がGlobal Playoffに進出、さらにそこから8人がGlobal Finalに進出するというのが全体の流れです。
WCS Korea
WCS Koreaのシステムについて解説していきます。
参加資格
世界の誰でも参加可能…ではありますが、韓国でオフライン主体で大会が開催される以上、韓国に拠点を設けられる人でないといけないということになります。
とはいえ現在韓国で修行したい海外選手がチームハウスを運営しており、実際2018年にはそこに所属しているプレーヤーがGSLに参加するケースも多く見られました。
これに関してはまた別の問題があったのですがそれは後述します。
GSL(Global StarCraft2 League)
2010年に始まったSC2で最も歴史のある大会「GSL」が今年も開催されます!主催はこれまで同様にAfreeca TVです。詳細は以下の通り。
- 年間3シーズン(2017,2018と同じ)
- 賞金総額はそれぞれのシーズンに1億6900万ウォン(2018は1億7000万ウォン)
- 優勝したプレーヤーはWCS Global Playoffへの出場権を得る
- 日本時間の水曜日18:30~と土曜日13:00~から基本的には開催される。
開催頻度や賞金総額などは17,18年と全く同じになりました。アフリカTVのサポートに感謝ですね。
賞金総額こそ同じものの、賞金分配方法は少し変わっています。
- 2018年→優勝4000万ウォン、準優勝1500万ウォン、3,4位750万ウォン、5-8位500万ウォン、9-16位400万ウォン、17-32位300万ウォン
- 2019年→優勝3000万ウォン、準優勝1200万ウォン、3,4位900万ウォン、5-8位650万ウォン、9-16位450万ウォン、17-32位300万ウォン
優勝準優勝の賞金が減った代わりに、3~16位の賞金額がアップしています。これは「賞金分配がトップヘビーすぎる」という批判に応えたものかと思います。
優勝者がごっそり持っていくよりも、多くのプレーヤーが食っていけるようになったほうがシーンの維持には+である、という考え方ですね。
ただし、全体の賞金額は100万ウォンほど減少しています。
海外選手のGSL出場について
「韓国選手はWCS Koreaでしかプレーできないのに、海外選手はWCS Circuit,WCS Korea両方でプレーできるのは不公平だ」というSolar選手の発言が話題になりましたが、
実際2018年には複数人の海外選手が予選を突破してGSLに参加、NeebやScarlettなど上位進出する選手も出てきました。
海外選手が韓国の地で戦うのを見るのは楽しいものですが、韓国選手からすると少ないパイを奪われているように感じるのも仕方ないかと思います。
これに伴い、GSL Season1では「GSLに参加した選手はWCS Challenger(後述)に参加できない」という制限を設けました。
その結果GSL予選を多くの海外選手が棄権し、結果としてScarlett選手のみがGSLに出場するという事態になりました。
この結果は意図したものではない(何言ってんだ当たり前だろと思いますが)とのことで、Season2からはこの制限は撤廃されるようです。
GSL Super Tournament
リージョンロックにより韓国選手は海外大会に参加することができないため、2つの短期大会、「GSL Super Tournament」によりさらなるプレー機会を提供します。
1回目はGSL Season1と2の間、2回目はSeason3の後に開催予定です。特に2回目はWCS Koreaの順位決定における最後のポイント獲得機会なので、毎年盛り上がります。
賞金総額は3000万ウォンと2018年と変わりませんが、優勝賞金が減り9-16位の賞金が増えています。
WCS Global Playoffの出場枠
WCS Global Playoffの出場枠は2016年と同様に8。内訳は以下の通りです。
- GSL優勝者(3シーズンで3人)
- WCS Korea Point上位者(5人)
※IEM Katowiceの優勝者がWCS Koreaプレーヤーだった場合、WCS Korea Pointからの出場者が4人になる。
筆者の感想
2016年から始まったリージョンロックによる海外シーン成熟の成果もあり、昨年は初めて海外プレーヤーのSerral選手がWCS Global Finalで優勝しました。
喜びの声が多くあった反面、韓国シーンの弱体化を指摘する声も多かったことは事実です。
Solar選手の海外プレーヤーのGSL参加についての発言もその文脈で出てきたものかと思います。
今回の海外選手の参加制限や賞金分配の変更は良い試みであるとは思いますが、韓国シーン再興に十分とは言えないでしょう。
幸いアフリカTVはGSL以外のSC2イベントの開催にも意欲を見せており、実際昨年末にはBJ(アフリカTV配信者)によるチームリーグなども行われました。
そういった形の支援も期待したい所ですね。GSL Season1にマウンテンデューがスポンサーとして付いたというのも良いニュースではないでしょうか。
加えて、もしかしたら中国シーンが韓国シーンを救うかもしれません。これについては後述します。
WCS Circuit
WCS Circuitのシステムについて解説していきます。
参加資格
2016年と同様、WCS Circuit地域における市民権、永住権、適切なビザを持っているプレーヤーが参加できます。
韓国選手でもアスリートビザなどがあれば参加できますが、実際そういった参加者がいるのかどうかは不透明です。
「他地域での参加」という観点で言うと、おなじみWinter選手も該当します。
WCS Winter
今年から新設された大会です。基本的にはWCS Circuitを1回潰してこの大会になった、という形になります。
詳細はこちらの記事をどうぞ→WCS Winter 2019の開催が告知されました。
概要は以下の通りです。
- WCS Winter EUとWCS Winter AMの2地域に分けて開催。それぞれの参加者は予選を突破した32人。
- Ro32,Ro16,Ro8(決勝トーナメント進出の6人を決める)はオンラインで行われる。
- 各地域の上位6人がオフラインで決勝トーナメントを行う。
以前行われていたWCS EU,WCS NAに近い形式の大会です。日本からもPSiArc選手がAM予選を突破して参加しています。
この大会の賞金分配は以下のようになっており
- 優勝1万2000ドル、準優勝8000ドル、3位6000ドル、4位5000ドル、5位4000ドル、6位3000ドル、7位2200ドル、8位1600ドル、9-16位925ドル、17-32位675ドル
全体的に広く賞金が分配される形となっています。GSLで見られた傾向と同じですね。
WCS Challenger
2018年と同様に、WCS Circuit Championshipへの出場権をかけたChallengerリーグが
北米(NA)、ヨーロッパ(EU)、ラテンアメリカ(LATAM)、中国(CN)、台湾/香港/マカオ(TW)、オセアニア/東南アジア(ANZ/SEA)の6地域で行われます。詳細は以下の通りです。
- WCS Circuit Championshipに合わせて年3回開催されるオンライン大会。
- 成績上位者は渡航サポート付きでWCS Circuit Championshipの参加権を獲得
- それぞれのChallenger大会で賞金総額は約1万ドル(2018年はリージョンによっては少ない所もあった)
- 大会形式はリージョンによって異なる
EU、NAのChallenger大会の予選ではラダー予選も設けられています。
WCS Circuit Championship
WCS Circuitのメイン大会であるCircuit Championshipですが、今年は1回がWCS Winterに置き換わり、全3回となります。
加えて、2018年は全4回が全てDreamhackイベントの一環として行われましたが、今年は少し異なります。詳細は以下の通りです。
- WCS Spring,WCS SummerがStarladder運営のもとウクライナのキエフで開催。WCS FallがDreamhack Montrealで開催。
- 賞金総額はそれぞれ10万ドル
- WCS Challengerからのシードプレーヤーに加え、オープン参加も含めた96人が参加可能。
- 優勝者はWCS Global Playoffの出場権を獲得。
- Challengerリーグからの渡航サポート込みの参加者枠は以下の通り。
- (4) 北アメリカ, (4) ヨーロッパ・アフリカ・中東, (2) ラテンアメリカ, (2) 中国, (2) 台湾・香港、マカオ、日本, (2) オセアニア・東南アジア
2018年は全4回すべてがDreamhackで行われましたが、今回はDreamhackでの開催はWCS Fall一回のみになり、代わりにStarladder運営による大会がWCS Spring,WCS Summerの2回行われます。
StarladderはWESGの予選の運営を手がけるほか、CS:GOやDotA2の公式大会の運営経験もある団体なので、運営実績に関しては心配する必要はないかと思います。
賞金分配はもともと広い分配だったこともあり、3,4位の賞金が6500ドル→6000ドルになったこと以外は変更ありません。
WCS Global Playoffの出場枠
WCS Global Playoffの出場枠は2018年と同様に8。内訳は以下の通りです。
- WCS Circuit Championship優勝者(全3回で3人。WCS Winter優勝者は含まれない。)
- WCS Circuit Point上位者(5人)
※IEM Katowiceの優勝者がWCS Circuitプレーヤーだった場合、WCS Circuit Pointからの出場者が4人になる。
筆者の感想
1回がWCS Winterというオンラインメインの大会になったこと、WCS Spring,WCS Summerの運営母体が変わったこと以外はほとんど変更はありません。
わずかに賞金額が減少したくらいでしょうか。とはいえ、Dreamhackでの開催がわずか1回となり、Starladderが開催する2回のオフラインイベントもDreamhackよりは小規模になることを考えると、
昨年からはコストカットされているのは間違い無いでしょう。それでも規模的には昨年とほぼ同じ形ということになりそうですね。
WCS Global Event
IEM Katowice
ポーランドはKatowiceで行われる大会。毎年この地で大きな盛り上がりを見せるこの大会が2019年も開催されます。
既にこの大会をサポートするためのWar Chestも発売済みで、既に賞金増額が上限に達していることが明らかになっていますね。
この大会の概要は以下の通りです。
- 賞金総額25万ドル+War Chestによる賞金増額15万ドル、合計40万ドル
- AM、EU、ASIAの3つのサーバーでそれぞれ予選が開催され、突破者は本戦グループリーグから出場可能。
- オープンブラケットからの参加も可能
- 優勝者はWCS Global Playoffへの出場権を獲得
賞金額にフォーマットも合わせてまさに「Mini-Blizzcon」と言ってもいいレベルの大規模大会になります。開催は2/25から3/3までとなっています。
賞金分配は昨年と同様です。
GSL vs World
Blizzconの前哨戦、GSL vs Worldが今年も開催されます。昨年はこの大会でSerralが優勝し、Blizzconでの快挙のまさに予告となりました。
Circuit,Korea側それぞれがポイント上位者とファン投票上位者の合わせて8人を選び、個人戦とチーム戦で対戦することになります。
チーム戦は以前はCircuit vs Koreaでしたが、2018年はチームキャプテンのSerralとMaruが選手をドラフトピックして行き混合チームを作成しての対戦になりました。
今年はどんな形式になるでしょうか?
WCS Global Final
そして一年のまとめとしてGlobal Finalが開催されます。詳細は以下の通りです。
- WCS Circuitから8人、WCS Koreaから8人の計16人がGlobal Playoffを戦う
- 勝ち残った8人がGlobal Finalに進出
- 賞金総額50万ドル+War Chestによる賞金増額最大20万ドル、合計最大70万ドル
これまでと同じ形式で行われるGlobal Finalですが、最も大きく異なるのは賞金分配です。「広く」分配する、という今回のWCS 2019システムのコンセプトを最も体現していると言えるでしょう。
以下はWar Chestで最大賞金上限まで言った場合の2018年、2019年賞金比較です。
- 2018年→優勝28万ドル、準優勝11.2万ドル、3-4位5.6万ドル、5-8位2.1万ドル、9-16位1.4万ドル
- 2019年→優勝21万ドル、準優勝9.6万ドル、3-4位5.1万ドル、5-8位2.4万ドル、9-16位1.2万ドル + Circuit、Koreaランキング9-16位のプレーヤーにも順位に応じて4500ドル~8000ドル。
筆者の感想
最も「トップヘビーすぎる」という批判が多かったGlobal Finalですが、上位者の賞金を減らし、Global Playoffに参加できなかったプレーヤーにも賞金提供を行うことになりました。
この変更はより多くのプレーヤーが恩恵を受けられるほか、9-16位に入ることにも意味が生じてくるため、ランキング争いの活発化にもつながるのではないでしょうか。
規模を維持しながらもシーン全体の維持を優先した良い変更だと思います。
終わりに
2018年はF2P化やSerralの活躍などもあり、SC2のEスポーツシーンはここ数年では最高クラスの盛り上がりを見せました。
個人的にはこの流れに乗ってWCSのさらなる拡張も期待していたのですが、結果としては昨年とほぼ同様、若干コストカット気味という形に落ち着いています。
ちょっぴりがっかりしたのも確かですが、Activision Blizzard全体がコストカットを進めているという報道やHeroes of the stormのEスポーツシーン廃止から考えると、
昨年とほぼ同等の規模が維持されたというのはSC2シーンを尊重してくれた結果だとも言えるかもしれません。
今年もSerralが王位を守るのでしょうか?それとも別の海外プレーヤーが台頭するでしょうか?あるいは韓国選手が王座奪還を果たすのでしょうか?軍隊から帰ってきた韓国プレーヤーはどんなプレーを見せてくれるでしょうか?
今年も胸を熱くする試合がたくさんWCS 2019で見られると良いですね。とまとめたところでもうちょっとだけ続くんじゃよ
番外編:中国StarCraft2チームリーグについて
2018年の終わり頃から、以下のような噂が流れていました。
「中国でSC2チームリーグが発足予定で、中国のEスポーツチームが海外選手や韓国選手にアプローチをかけている。Scarlettの中国チーム入団はその一環である。」
最初は実現したら夢があるなー、でも噂にすぎないよなーと思っていたのですが、後になって続報が出てきました。
https://www.teamliquid.net/forum/starcraft-2/540855-kr-players-join-cn-team-league
中国のSC2解説者であるxiaose氏が建てたスレッドで、複数のプロチームが参加する中国SC2チームリーグが開催予定であること、
大会は基本オンラインで行われ、決勝大会が3日間かけて中国上海で行われる予定であること、
4月に最初のシーズンを開始予定で、1年に2シーズンが計画されていること、
中国選手の他にSolar,herO,Zestら有名韓国選手も参加予定であることが述べられています。
後を追うようにSolar,herOの中国Eスポーツチーム「Triumphant Song Gaming」入団が発表されるなど、噂は事実で着々と準備が進んでいるらしいことが明らかになりました。
昨年のLoL世界大会を中国チームが制するなど飛ぶ鳥を落とす勢いで成長する中国Eスポーツシーンですが、SC2でもそれなりの規模のシーンが存在することが知られています。
それがチームリーグという形でさらに成長するのであればとても嬉しい限りですね。
2016年のプロリーグ終了以降、大会は個人戦のみになり、安定したプレー環境やチームによる給料が得られない選手が多くなってしまっていた韓国シーンですが、
この中国プロリーグがシーンの安定化の大きな助けになるかもしれません。
とはいえ、まだ正式発表があったわけではないので、みなさんも開催されたらいいなくらいにとどめておいてくださいね。公式発表があったらまた記事を書く予定です。