2016 WCSシステムに関するニュースについて

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Introduction

日本時間の2015年12月12日、海外ニュースサイトのBreitbartから来年のWCS公式大会システムに関する衝撃的なニュースが出てきました。
その記事はこちらです→Blizzard Reportedly Radically Overhauling World Championship Series of ‘StarCraft 2′

記事を書いたのはRichard Lewis記者。彼はこれまで多くのリーク情報を公開しており、例えばLegacy of the voidのβテスト開始時期に関するリークを行い的中させています。

またこの記事は事前に数人の海外SC2パーソナリティが自らの配信向け番組で公開した「噂」とも合致します。

ここではこの記事に書かれている内容を説明しつつ、それがもたらす影響、私個人の意見などを書いていこうと思います。
また現在のWCSシステムについて知りたい人は大会観戦ガイド#WCS(World Championship Series)をご覧ください。
注意:現状ではあくまで「噂」「ある一記者が書いた記事」であり、Blizzardの公式発表ではありません。


記事で明かされた2016年WCSシステムの概要

記事ではBlizzardがKeSPA及び韓国のSC2関連組織にWCSの新しい大規模システム変更について説明していた…という書き出しになっており、ここが情報源と思われます。
Lotvのβテスト開始に関するリークの際もKeSPAへの連絡が情報源となっており、記者はKeSPA内にパイプがあるのかもしれません。

2016年システムの概要はこうです。

  • World Championship SeriesWCS GlobalWCS Circuitの2つのパートに分けられる。
  • WCS Globalは韓国のGlobal StarCraft League(GSL)StarCraft2 Starleague(SSL)の2つからなる。
  • WCS CircuitはRedbull,Intel Extreme Masters(IEM)及びDreamhackが運営するイベントからなる。
  • WCS CircuitでプレーするにはEUかアメリカでの労働ビザもしくはP1アスリートビザが必要である。旅行者ビザは不可。
  • WCS Globalの上位8人とWCS Circuitの上位8人がWCS Global Finalに進出する。

解説

SC2シーンは2012年以降基本的には韓国選手の独壇場だったと言っていいでしょう。ほとんどの海外大会では韓国選手が上位を独占。
2013年に始まったWCSでは韓国の他にNAとEUで大会が行われましたがここでも(EUとNAの程度の差はあれ)韓国選手に独占されました。
2015年にNAとEUが統合されたWCS Premierでは厳しいリージョンロックもあってかWCS初の海外選手優勝者が出ましたが、3年間でGlobal Finalに進出した海外選手はわずか2人だけです。
この新システムの情報はそれを改善するための海外シーンの保護とGlobal Finalにおける海外選手の存在感の上昇が目的だと思われます。

まずWCS Globalですが、これは基本的には「韓国選手用」ということになります。GSLとSSLがここに含まれるわけですし、これらの大会は韓国で行われますからね。
勿論海外選手も参加可能ですが、それには韓国に移動し予選を突破しなくてはなりません。

続いてWCS Circuitですが、これはビザの条件から考えても「海外選手用」ということになります。2015年のWCS Premierと参加条件はほぼ同等と考えて良さそうです。
ただ注目すべきは2015年のWCS Premierは無くなっているということです。記事によればWCS Circuitに含まれるのはRedbull,IEM,DHが運営するイベント…とあります。
2015年に各地域で行われたWCS予選およびChallenger League、そしてEU,NAでおこなれたWCS PremierのRo32とSeason Finalも無くなるということになります。
別の「噂」ではWCSを運営していたESLがWCSの運営を拒否したという話もありました。WCSが無くなるのはこれが理由という可能性もあります。

Global Finalへの進出条件も特筆すべきことでしょう。「韓国選手用」のWCS Globalから8人、「海外選手用」のWCS Circuitから8人ということは
海外でプレーする韓国選手を除いても複数の海外選手がGlobal Finalに進出すると考えてよいでしょう。16人の全てあるいはほとんどが韓国選手だった13~15年とは大きく違います。

このシステムのメリット

  • 海外シーンの保護

これがこのシステムの最も大きな狙いであり、全てと言っていいでしょう。韓国選手を半ば韓国に隔離状態にすることで、海外シーンは海外選手中心に活躍することになります。
Redbull,DH,IEMともに韓国選手がほぼ独占状態だったので海外選手にとっては悪くないシステムです。海外選手の活躍が保証されれば、新たにプロを目指す人、新たにSC2部門を作ろうとする海外チームも出てくるかもしれません。
「韓国選手に勝たなくてもプロとしてやっていける」というのはシーンの安定化にも繋がり、海外シーンの再復興に繋がっていく可能性もあるでしょう。
海外大会ではやはり海外選手が活躍すると盛り上がるのは今年のWCS Season3 Finalなどを見ていても実感できます。そういうシーンが多くなるかもしれません。
韓国選手頼みのSC2シーンを健全化し真の意味でグローバル化するという目的では、試してみる価値があるシステムと言っていいのではないでしょうか。

このシステムのデメリット

  • WCS Premier廃止による大会の減少

これはこのシステムで最も気にかかる点です。WCS Premierは非常に大掛かりな大会でした。世界規模で予選・Challenger Leagueを行い、EU及びNAのESLスタジオでPremierのRo32が行われ
最後にWeekend EventとしてNAもしくはEUでSeason Final(Ro16~)が行われていました。これがまるまる無くなるというのはStarCraft2の露出という面であまりに大きいと言わざるを得ません。
またRedbull,IEM,DHどれもSC2への投資を小さくしているということも念頭に入れなければなりません。2014年には6回のIEM,6回のDH,3回のRedbull運営のプレミアトーナメントがありましたが、
2015年にはIEMが4回、DHが4回、Redbullが1回と大きく減少しています。勿論Blizzardがこういう形式を用いるのであればWCS Premierで使っていた資金がIEM,DH,Redbullに行くことが予想され、また大会が増える可能性はあります。

  • 韓国選手の「隔離」による韓国選手の収入低下、海外選手のレベル低下

SC2が以前のBWほどの人気を得られていない現状において、韓国選手にとって海外大会はさらなる賞金を稼ぐ大きなチャンスだったと言って良いでしょう。
実際に海外大会において以前ほどの賞金が得られなくなったことを嘆く韓国選手も多く存在しました。このシステムでは韓国選手が海外大会で賞金を稼ぐ機会は完全に失われます。
そのことが韓国シーンの縮小に繋がる可能性もあります。韓国を出てビザを取得しWCS Circuitでプレーを試みる選手も増えるかもしれません。

またこのシステムでは海外選手がトップクラスの韓国選手と戦う機会はかなり少なくなります。WCSとは無関係のトーナメント及びGlobal Finalのみです。
このことが海外選手のレベル低下に繋がる可能性もあります。せっかくGlobal Finalに8人のWCS Circuitプレーヤーが進出しても、すぐに負けてしまっては意味がありません。

  • 海外大会に韓国選手が参加しないことによる海外大会への関心の低下

なんだかんだ言いつつも、SC2シーンは韓国選手でもっていたのは事実です。勿論海外選手の活躍を観たい人もたくさんいるでしょうが、同様に韓国選手のハイレベルなプレーを求める人も多いです。
韓国選手を海外大会からほとんど締め出してしまうことで、韓国選手のハイレベルなプレーを望んでいた人が大会から興味を失ってしまう可能性も出てきます。

不明な点

単なるリーク記事であり公式発表ではない、また事実でない可能性も以上仕方ないのですが、不明な点も多いです。
まずはNAとEU以外のプレーヤーについてです。WCS Circuitの参加条件にはEUもしくはアメリカのビザとありますが、例えば日本も属しているSEAや南アメリカ、中国や台湾などはどうなるのでしょう。
ビザの問題がなくても、Redbull,IEM,DHに参加するのが難しい地域のプレーヤーも多いです。公式大会がなくなると彼らがプレーする機会が少なくなることも考えられます。 これらのシーンは非常に大きい訳ではありませんが無視できるものでもありません。これらを切り捨てるというのはありえないことです。
大会形式も不明です。WCS PremierがなくなりIEM,Redbull,DHのみになるということは、いわゆる週末大会のみになってしまうということですが、それでは平日公式イベントが何も行われないということでしょうか?
不定期な週末大会だけでは視聴者の継続的な興味を満たすことは出来ません。これは選手にとっても同様でしょう。

筆者の個人的な意見

私個人的には、このシステムには賛成したい点が多いです。特に海外シーンの保護という点。
SC2シーンはあまりに韓国シーンに依存しすぎており、このままではBWのように海外シーンが無くなってしまう恐れもあると考えていました。このシステムのように韓国選手を「隔離」し、海外シーンを保護することで、海外でのSC2人気をある程度取り戻せるかもしれません。現状のどの海外大会においても韓国選手が上位を独占する状況はお世辞にもいい状況とは言えないのでは無いでしょうか。プレーのレベルもさることながら、地元選手の活躍というのはやはり大会の盛り上がりに大きく影響すると思います。韓国選手の締め出しが一時的に大会の人気低下に繋がる可能性はありますが、最終的にシーンの健全化につながるのであれば「必要な痛み」だと考えます。
デメリットの所に韓国と海外の実力差が増えてしまう…ということも書きましたが、個人的にはこれもそこまで気にしなくていいのではないかと思っています。今文句なしのNo.1EスポーツであるLeague of Legendsでも韓国・アジアの強さは際立っており2015年の世界大会決勝も韓国VS韓国となりましたが、しっかりしたリージョンロックシステムや各地域の公式大会の運営もあってか普段の地域シーンの盛り上がりは凄いものです。世界大会は年に一度ですが、地域シーンは1年にわたって続きます。視聴者にとっては地域シーンに触れる時間のほうが圧倒的に長いのです。世界大会の試合のレベルより、普段の地域シーンの盛り上がりのほうが大事であると考えます。むしろ韓国選手と競う必要がなくなれば海外選手の生活が安定、モチベーションも上昇し、「衣食足りて」ではないですが、かえって実力が向上することもあるかもしれません。

もちろん反対というか心配な点もあります。それはやはりWCS Premierが無くなるという点。公式大会がなくなりサードパーティーの大会のみになるというのはあまりに不安が大きいです。
いくらBlizzardが何か援助をすると言っても、サードパーティーの大会である以上全てをBlizzardの思い通りにすることは出来ないでしょう。スケジュールの組まれ方次第ではWCSイベントが何もない時間が長く続いたり、逆に固まったりしてしまうかもしれません。小さなシーンに属するプレーヤーにとっては公式大会こそが希望だったということもあるでしょう。日本もそういう面は大きいと思います。DreamhackやIEM,Redbullがどういう大会形式を用いるか分かりませんが、それらの大会が小さなシーンのプレーヤーにまで気を使ってくれる保証はありません。事実世界で予選が行われたDreamhack Winter Lotvトーナメントでは、日本や東南アジアの国々はプレーする予選が存在しませんでした。勿論Blizzardの援助により、小さなシーンにも気を使ってくれる可能性もあるのですが…。
何よりBlizzardほどの会社が自らのタイトルの公式大会を運営しないというのは個人的には受け入れたくありません。HSもHotSも来年は公式大会が増えるというのに、です。
もし噂通りにESLがWCS Premierの運営を拒否したというのであれば、何とか別の方法を見つけてでもWCS Premierを運営してほしいというのが正直な所です。

終わりに

何度も言いますが、公開されたのはBlizzardの公式情報ではなく、ただの噂+一記者が公開した記事 でしかありません。
記者の信頼性からこの内容はある程度の信頼性はあると考えますが、それでも公開されていない詳細はあまりにも多いですし、まるっきりデタラメという可能性だってあります。
こんな記事を書いておいてなんですが、今できることはとにかく2016年のシステム詳細の公式発表を待つことでしょう。正式発表が出たらまた解説記事を書く予定です。
2016年のシステムが全てのプレーヤーにとって、勿論日本のプレーヤーにとっても、素晴らしいシステムになることを期待しましょう。

コメント

興味深く読ませていただきました。
続報のときも解説待ってます(O_O)
-- Lapack (トーク) 2015年12月12日 (土) 21:04 (UTC)